自己破産は、家族に知られずに手続きができるのでしょうか?
自己破産をしたら家族にどんな迷惑・影響を与えてしまうのでしょうか?
生活に支障が出るほどの借金を抱えてしまったときには、自己破産を検討する人が多いでしょう。
しかし、職場の同僚や家族に知られたくなかったり、迷惑をかけたくないと思い、自己破産申立を行うことに躊躇したり、不安を感じている人もいるでしょう。
今回は自己破産を家族や同僚に知られずにできるのか、自己破産することで家族にどういった影響があるのかについて解説します。
自己破産とは?
自己破産とは、借金問題を抱えてしまった方が、借金を帳消しにして、無かったことにしてしまう強力な債務整理手段です。
自己破産が認められる(破産免責)と、それ以降の借金返済義務はなくなります。
そのため、破産免責後に給料を受け取ったとしても、その給料から借金を返済する必要はありません。
自己破産では、申立て時点で保有している資産の範囲内で借金を返済すれば良く、返済できない分に関しては返済義務を免除してもらえるのです。
そのため、借金が完済できずに困っている方にとって、自己破産は非常に強力な味方となってくれます。
関連記事:自己破産が認められるための条件
同居家族に知られずに自己破産できる?
家族に知られずに内緒で自己破産できないかと思う原因は色々あります。
例えば、家族に内緒で行っていたギャンブルや投資で損がでてしまって、補填するために借金を繰り返すようになってしまった場合や、友人などの連帯保証人になっていた、趣味に多額のお金を費やしてしまったなどが考えられます。
こういった家族に知られたくない、秘密にしておきたい借金が原因だと、その後の自己破産も相談しにくいものです。
できれば、家族に知られずに内緒で自己破産を済ませてしまって、借金を無かったことにしてしまいたいと思ってしまいます。
最初に、今回の最も主要なテーマである「家族に知られずに自己破産できる?」から解説していきましょう。
結論から言えば、自己破産の手続きを同居の家族に内緒で行うのは正直難しいと言わざるを得ません。
同居の家族にばれてしまって、内緒で自己破産ができない理由は下記の通りです。
官報に氏名と住所が載る 裁判所とのやり取りが必要 弁護士とのやり取りが必要 同居の家族の書類を求められることがある 資産が没収されることがある 新たな借入ができなくなる |
これらの内緒で自己破産できない要因について、それぞれ詳しくご説明します。
自己破産すると官報に掲載される
自己破産をすると「官報」に名前と住所が掲載されます。官報とは、国が発行している新聞のようなものです。
貸金業や金融機関などに勤務している人は官報を見ることがありますのでご存知の方もいるかもしれません。
官報をチェックしている一般の方はあまりいませんが、最近は官報がネットで無料閲覧できるようになっています。
例えば、氏名でインターネット検索されると、官報上の破産者公告にヒットしてしまい、家族や知り合いに見つかる可能性はゼロではありません。
官報がきっかけで家族に破産がばれることは少なくないでしょう。
裁判所とのやり取りが必要
自分で自己破産の手続きをするときは、裁判所へ申し立てをしますので、裁判所との直接のやり取りが必要です。
裁判所から申立人の家族へ直接連絡がいくことはあり得ませんが、郵送による連絡事項も少なからず発生します。
裁判所から郵送されてくる書類を家族が先に見つけてしまった場合は、自己破産を行っていることがばれるきっかけになります。
通常、裁判所から書類が送られてくるということは少ないでしょうから、裁判所からの書類を家族が受け取ってしまった場合には、大きな騒ぎになってしまうかもしれません。
自宅に裁判所からの書類を郵送されたくない場合は、自分で手続きをするのではなく弁護士に自己破産の代理人となってもらうように依頼すると良いでしょう。
弁護士に自己破産の手続きをお願いした場合は、裁判所からの書類は弁護士宛に郵送されますので、自宅で家族に知られるリスクは低くなります。
弁護士とのやり取りが必要
自己破産を弁護士に依頼した場合は、裁判所からの書類は弁護士へ送られますので、裁判所との直接のやりとりは必要ありません。
しかしながら、裁判所の代わりに手続きのために弁護士とのやり取りが必要になります。
弁護士とのやり取りは主に電話です。自宅などで家族がいるときに弁護士から電話がかかってくることもあるかもしれません。
上手くごまかせる場合は問題ありませんが、家族からあやしまれたり、追及をされることにもなりかねません。
また、依頼する弁護士に対しては、極力家族に知られずに内緒で自己破産するつもりであることを伝え、郵送による連絡は避けてほしい、自宅の固定電話への連絡を避けてもらうなど、事前に対応をお願いしておいた方が良いでしょう。
家族の所得証明や通帳のコピーを求められる
弁護士を通して自己破産を申立てしたとしても、場合によっては同居する家族の収入を証明する書類や通帳のコピーを裁判所から求められるケースもあります。
その場合は、家族から事情を求められることもあるでしょう。
このような場合でも、家族に事情を説明せずに自分で書類を準備できる状況なら問題ないでしょう。
しかし、自己破産を秘密にすることを優先するあまり、家族から不審に思われたり、疑われてしまうようでは逆効果となってしまいます。
資産が没収されることもある
自己破産は積みあがってしまった借金を全て棒引きにして、チャラにできる可能性のある強力な債務整理です。
しかし、何の条件もなく、全ての借金返済義務を免除してもらえるわけではありません。
自己破産では、一定の価値を上回る資産があれば、それを現金に換え、チャラにしようとしている借金の債権者に返済する必要があります。
例えば、預金や、所有している自動車、自宅などの不動産があれば、それらも借金返済に充てる必要があります。
車や、自宅などを売却して、借金返済にあてることになれば、家族にばれてしまう原因になるでしょう。
新たな借入ができなくなる
自己破産して、無事破産免責を受けることができ、全ての借金がなくなったとしても、それで全てが終わって、何もなかったことになるわけではありません。その後の生活に影響することもあります。
その自己破産のデメリットの1つが、新たな借金ができなくなることです。
自己破産を行うと、個人信用情報に異動情報(金融事故情報)ありと記載されます。これがいわゆるブラックリストです。
ブラックリストになると、その後の新規借入がほぼ出来なくなってしまいます。
加えて、クレジットカードを作ることもできませんし、住居を賃借する際の審査に影響することもあります。
そのため、家族でマイカーローンを借入して車を購入しようとしたり、住宅購入が難しくなってしまうなどの影響が出てしまい、家族にばれてしまう原因となってしまいます。
そして、一度ブラックリストになると、その後10年程度は個人信用情報上の記録が消えずに残ってしまいます。
別居の家族なら内緒で自己破産ができるかも
同居家族に知れずに自己破産することが難しいのは前述の通りです。
しかし、別居の家族なら、自己破産をしても知られない可能性は高くなります。
別居の家族は弁護士との電話や、郵便物のやり取りも分からないですし、別居の家族は生計も別となるため所得を確認する書類の提出を求められることもありません。
しかし、別居の家族が連帯保証人になっている場合はバレてしまいます。
借入人本人が自己破産するだけでは、連帯保証人の借金返済義務はなくなりません。
また、債権者としても、借入人への請求が出来なくなってしまった以上、連帯保証人に対して請求することになりますので、連帯保証人に秘密にしておくことはできません。
また、自己破産をするときは内緒にできるかもしれませんが、後々に知られる可能性はゼロではありません。
自己破産をするとその後数年間もローンを組むことができなくなりますし、家族から連帯保証人を頼まれても保証人になれなくなります。
自己破産によって家族に与える影響
自己破産を検討される方にとって共通の希望は、家族に迷惑をかけずに自己破産したいということではないでしょうか。
自分が自己破産したことによって、家族の財産が没収されたり、仕事に影響がでてしまうようでは困りますよね。
自己破産は申し立てた本人のみに適用されるもので、原則家族の財産に影響はありません。
しかし、名義が家族であっても実質的には申立人の財産だと判断された場合は、処分の対象になります。
また、家族の財産に影響はないとしても、多少なりとも与える影響はあるでしょう。
影響を与える家族は下記の通りです。
同居の家族 共有名義の財産を持っている家族 債権の連帯保証人になっている家族 クレジットカードが使えなくなる |
それぞれ詳しくご説明します。
同居の家族へ与える影響
自己破産をした場合は、破産者本人が所有している住宅や20万円以上の価値がある財産が差し押さえられ、債権者へ分配されることになります。
家族名義で所有しているものであれば、金額にかかわらず没収の対象ではありません。
ただし、破産申し立て前に意図的に名義変更した場合は没収対象になりますし、そもそも債権者を害する行為として、破産自体が認められなくこともありますので、ご注意ください。
20万円以上の価値がある財産としては、主に自動車などがあげられますが、査定価格が20万円を下回る場合は処分されません。
もし破産申立人名義の住宅があれば、それは立派な財産となるため家を失うことになります。そうなると同居の家族は引っ越しをしなければなりません。
破産申立人が20万円以上の価値がある自動車を所有している場合も、その車を失うことになります。
家や車以外には、「学資保険を解約しなければならない」「家族カードが使えなくなる」などの影響を与えることになります。
破産手続きのなかで資産を没収されてしまうことで、家族にも影響がでることがあるのです。
共有名義の財産を持っている家族に与える影響
共有名義の財産としては、土地や家があげられます。
例えば親からの相続で兄弟の共有名義の土地や家がある場合や、夫婦の連帯債務で住宅ローンを組み、自宅を夫婦の共有名義にされている場合などがあげられます。
不動産を共有名義にしている場合、共有名義人のどちらかが自己破産をすると、もう一方の名義人に影響を及ぼしてしまいます。
自己破産をすると申立人の共有持分である1/2が競売にかけられますが、通常1/2では落札されにくいです。
この場合は、もう一人の名義人が買い取るか任意売却などで解決しなければならなくなるため、共有している家族に影響が出てしまうのです。
債権の連帯保証人になっている家族
同居、別居に関係なく何らかの債権の連帯保証人になっている家族は、自己破産によってその債務を請求されることになります。
借入人本人が自己破産したからといって、連帯保証人に返済義務はなくなりません。
それだけで多大な迷惑をかけてしまうわけですが、場合によっては連帯保証人も共に自己破産をしなくてはならないケースもあります。。
それは、債務の額が大きすぎて連帯保証人も支払いが難しい場合です。
自己破産をするときに、借金の連帯保証人がいる場合はその人に影響を与えることになります。
連帯保証人も自己破産によって、借金の返済義務を免れることはできますが、借入人本人と同様に、ご自身の資産を没収されることになります。
クレジットカードが使えなくなる
自己破産すると、本人が契約しているクレジットカードは原則使用が停止されてしまいます。
新たにクレジットカードの発行ができなくなるだけでなく、既に発行しているクレジットカードも使用ができなくなる可能性があるのです。
自己破産時に債務免責の対象となっていないクレジットカードの場合、すぐに使用が停止されないこともありますが、有効期間経過後の再更新はされなくなります。
また、自己破産した本人のクレジットカードが使えなくなるということは、家族用に発行していた家族カードも使えなくなってしまいます。
家族カードはクレジットカードの本契約に付随するものとして、家族が利用できるように発行されるクレジットカードです。
本人の信用によって発行してもらうクレジットカードですので、自己破産後には家族カードも使用できなくなります。
自己破産後でも迷惑が掛からない
一方、自己破産後に家族が迷惑を受けることとして心配されるもののうち、実際には家族に影響せず、迷惑がかからないというものもあります。
自己破産しても家族に迷惑がかからないものも確認しておきましょう。
家族名義の家は残せる
前述の通り、自己破産で没収される資産は、借入人本人が所有している資産のみです。
そのため、家族が所有している家であれば、自己破産によって没収される資産とはなりません。
例え、破産申し立てした家族が現在も居住している家であっても、また、所有している家族が妻や、子であったとしても、家族名義の家は没収されませんので安心して良いでしょう。
同様に、家族名義の車も没収の対象になりません。
つまり、自己破産は家族が単独で所有している資産には影響せず、資産という観点では迷惑をかけないと言えます。
ただし、実際には破産者所有の資産であるにもかかわらず、名義だけを家族に移しているようなケースであれば、没収されてしまうこともありますので要注意です。
家族名義のクレジットカードは使える?
破産者本人ではなく、家族が契約しているクレジットカードは原則として影響を受けません。
そのため、自己破産したとしても、家族名義のクレジットカードは引き続き使用することができます。
また、家族が契約しているクレジットカードで、破産者が使用するように発行していた家族カードがある場合、こちらも通常は使用を継続できます。自己破産したからといって家族カードとして発行しているクレジットカードまで使用できなくなるわけではありません。
なお、自己破産後に家族が契約するクレジットカードで、「破産者が使用するための家族カードを発行できるか?」と疑問に思われる方も多いでしょう。
結論を言えば、家族カードであればクレジットカードを持つことは可能です。
クレジットカードの審査は原則として契約者の信用をもとに行われます。
契約者である家族の信用力が高ければ、家族カードの利用者が自己破産していても、家族カードを発行してもらえる可能性は高くなります。
しかしながら、例外もあります。
例えば、家族カードを申込しようと考えているクレジットカード会社が、自己破産時に迷惑をかけてしまったクレジットカード会社の場合、クレジットカード会社の社内情報によって、家族が自己破産していることがばれてしまい、家族カードの発行を拒否されてしまう可能性があります。
また、クレジットカードを契約している家族の信用力がそれほど高くなく、家族カードの発行自体を拒否されるケースもあるでしょう。
家族に影響を与えない債務整理の方法
自己破産は債務の支払い義務が免除されるため、自分は楽になれますが、家族にはつらい思いをさせてしまうかもしれません。そんな時に検討してほしいのが自己破産以外の債務整理です。
自己破産以外の債務整理には「任意整理」と「個人再生」があります。
それぞれについてご説明します。
任意整理
任意整理は、支払いの負担を減らすために債権者と話し合い、合意が得られれば利息の一部を免除してもらったり、返済期間を延ばして、一回当たりの返済金額を減らしてもらうための債務整理です。
任意整理は自己破産とは違い、裁判所を通して行う法的手続きではありません。
そのため、債権者と個別に相談し、返済方法の変更について合意を得る必要があります。合意が得られなければ、任意整理を行うことはできません。
任意整理の場合は債権者や弁護士との話し合いが主となりますので、家族に影響がほとんど無い上に、家族に知られずに手続きができる可能性は高くなります。
個人情報保護が厳しくなっていますので、債権者も事前に同意がない限り、借入人の家族に対して無断で知らせるということは行いません。
任意整理は比較的スムーズに手続きができるので、弁護士事務所へ足を運ぶのは1回か2回程度です。
自己破産は全ての債務に対して手続きが行われますが、任意整理はどの債務を整理するか選ぶことができます。
例えば保証人がいる債務を除外したり、車のローンを除外するなど家族に影響が出ない方法で支払いの負担を減らせる手続きなのです。
個人再生
個人再生は、借金を減額し、返済計画が裁判所に認められるとその返済計画に従って返済をしていく手続きです。
個人再生は民事裁判法に基づいて行われる裁判手続きのため、裁判所に申し立てをする必要があります。
自己破産のときと同じように、同居の家族の収入を証明する書類を求められることがあるため、家族に内緒で行うのは難しい場合もあるでしょう。
裁判所へ提出する書類が多いため、任意再生よりも手続きが複雑になります。
しかし、個人再生には自宅を残せるというメリットがあります。
個人再生では、住宅ローンだけを優先的に弁済して、その他の借金だけを減額してもらうという返済方法が認められます。
そのため、自己破産のように資産全てをうしなうわけではありませんので、家族に与える影響を少なくすることができます。
一方、個人再生は住宅ローン以外の債務を選んで除外することができないので、自己破産と同様に車を失ったり、連帯保証人に迷惑をかけてしまうこともあります。
しかし、自己破産と違い自宅は残すことができるのは大きなメリットです。
また、任意整理よりも個人再生の方が減らせる借金の額は大きくなります。
個人再生は、裁判所を介して行う債務整理のため、任意整理に比べれば、債権者に対する強制力も強くなります。
多額の借金があり、自宅を保有しているケースでは個人再生を検討しましょう。
相談に適した専門家
自己破産などの債務整理は法律に詳しくない個人が単独で行うのは困難です。
そのため、弁護士などの専門家に相談して進めるのが良いでしょう。
自己破産、任意整理、個人再生などの債務整理に特化した弁護士もいますので、相談者の状況にあわせて、車を残すことができそうかなども相談に応じてくれます。
また、弁護士によっては、実際に手続きを依頼する前に、無料で相談にのってくれる方もいます。
- アース法律事務所/債務整理・破産・個人再生・過払い金請求など4.8
☆元裁判官の弁護士が借金問題を解決
☆初回相談無料
☆全国対応可能
☆個人再生、任意整理、自己破産、過払い金請求などに対応
まとめ
今回は、自己破産は家族に知られずにできるかと、自己破産が家族に与える影響についてご説明しました。
自己破産は家族に知られずに行える場合もありますが、同居の家族にはバレてしまう可能性が高いでしょう。
そのため、家族に内緒で自己破産することは難しいと考えておきましょう。
どうしても家族に内緒で借金問題を解決したい場合、もしくは、自己破産による家族へ与える影響を少しでも減らしたいなら、任意整理か個人再生も検討してみてください。