住宅ローン返済中になるべくした方がいいと言われているのが「繰り上げ返済」です。
しかし、住宅ローンの繰り上げ返済には多くのメリットがありますが、繰上げ返済をしないほうがいいケースもあります。
繰り上げ返済とはなにか、また、繰り上げ返済をした方が良い人と、しないほうが良い人の違い、繰り上げ返済の失敗例などについて詳しく解説していきます。
繰上げ返済ってなに?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の通常返済(約定返済)とは別に任意の金額を追加で返済することです。
繰り上げ返済をすることで元本の借入残高を減らせば、その分、支払利息を減らせるほか、返済期間を短縮できるなどの効果が期待できます。
そのため、少しでも住宅ローンの総返済額を少なく抑えたいという方には、繰り上げ返済はおすすめの手段となります。
住宅ローン契約時に頭金をいれていなかったという人や、高齢(特に45歳以上)で住宅ローンを借入した人には、特に積極的に繰り上げ返済をすべきだと言えます。
ただし、住宅ローンによっては繰り上げ返済手数料が必要となるため、事前に確認をしておくようにしましょう。
繰り上げ返済をするメリット
住宅ローンの繰り上げ返済は、通常返済以上の金額を返済することができるため、返済期間を短くすることや、支払利息を減らすことができます。
繰り上げ返済は毎月しなければならないというものではないため、余裕ができた月や、そのために計画的に貯めておいたお金などで無理なく返済することができます。
一般的に繰り上げ返済は、「繰り上げ返済時期が早い」「金利が高い」「借入残高が大きい」ほどメリットが大きいといわれています。
住宅ローンを契約してから1年後に繰り上げ返済をした場合と、10年後に繰り上げ返済をした場合では減らせる支払利息がかわってきます。
借入当初に繰り上げ返済をする余裕はないかもしれませんが、できるだけ早い時期に繰り上げ返済をしていくことをおすすめします。
繰り上げ返済の2つの方式
住宅ローンの繰り上げ返済には2種類の方法があります。
繰り上げ返済すれば、その分、借入残高が減少しますので、その後の約定返済の方法を変更する必要があるためです。
とにかく返済期間を短くして早期完済を目指したい場合は「期間短縮型」を、返済期間はそのままで毎月の返済額を減らしたい場合は「返済額軽減型」を選択することができます。
繰上げ返済の2タイプ
- 期間短縮型:返済期間を短くする方法
- 返済額軽減型:毎月の返済額を減らす方法
返済額軽減型とは?
住宅ローンの繰り上げ返済で「とにかく毎月の返済額を減らしたい」という場合は、返済額軽減型を選択することをおすすめします。
繰り上げ返済の効果を実際にシミュレーションをしてみましょう。
(前提条件)借入額3,000万円、返済期間35年、借入利率2.0%、毎月の返済額9.9万円の場合
上記の条件で15年ごとに100万円繰り上げ返済を実行した場合でみていきましょう。
繰り上げ返済しない場合 | |
毎月の返済額 | 9.9万円 |
返済期間 | 35年 |
返済総額 | 4,173万円 |
繰り上げ返済をした場合返済額軽減型の場合 | |
毎月の返済額1年目~15年目 | 9.9万円 |
16年目~30年目 | 9.4万円 |
31年目~35年目 | 7.7万円 |
返済期間 | 35年 |
返済総額 | 4,124万円 |
返済総額は49万円しか軽減されませんが、毎月の返済額は確実に減ります。
その分、毎月の返済負担が少なくなりますので、日々の資金繰りは楽になります。
また、楽になる分、貯蓄を増やすことができれば、その分を次の繰り上げ返済に回すこともできるでしょう。
返済額軽減型の繰り上げ返済がおすすめなのは、下記のような人です。
《返済額軽減型の繰上げ返済がおすすめの人》
- 将来利息よりも現在の支出を減らしたい
- 将来借り換えをしたいため、期間を短縮したくない
- 将来の金利上昇リスクにそなえ、毎月の返済額を減らしておきたい
返済額軽減型は期間短縮型よりも支払利息軽減効果は低いですが、毎月の返済負担を減らすことができるため、将来的に支出が増える予定がある人など、毎月の返済負担を軽減したい人には特におすすめです。
特に変動金利で借りている人は、将来的に金利が上昇するリスクが常に付きまといます。
将来金利が上昇した場合は総支払額も増えます。毎月の返済額を繰り上げ返済によって早めに減らしておけば、将来の住宅ローン金利上昇時にも対応できるでしょう!
期間短縮型とは?
期間短縮型とは、毎月の返済額よりも返済期間を減らすことを目的とした繰り上げ返済です。
返済額軽減型よりも支払利息や返済総額を大きく減らすことができます。
さきほどの返済額軽減型と同じ条件で、繰り上げ返済の効果をシミュレーションをしてみましょう。
繰り上げ返済しない場合 | |
毎月の返済額 | 9.9万円 |
返済期間 | 35年 |
返済総額 | 4,173万円 |
繰り上げ返済をした場合、期間短縮型の場合 | |
毎月の返済額 | 9.9万円 |
返済期間 | 33年 |
返済総額 | 4,109万円 |
繰り上げ返済前よりも返済期間を2年短縮し、住宅ローンの返済総額を64万円減らすことができました。
繰り上げ返済額を増やせば増やすほど、返済総額を減らす効果は大きくなります。
繰り上げ返済の期間短縮型が向いているのは下記のような人です。
《期間短縮型の繰上げ返済がおすすめの人》
- 住宅ローンを早く完済させたい
- 総支払額を大きく減らしたい
- 定年退職前に住宅ローンを完済させたい
老後に支払い続けるのが不安で、できるだけ早く完済させたいという人や、総返済額を効果的に減らしたいと考えている人は積極的に繰り上げ返済を続けていくようにしましょう。
繰り上げ返済のデメリット
繰り上げ返済を行うと住宅ローンに対する支払利息が減少するなどメリットに注目してしまいます。
そのため、住宅ローン利用者のなかには、少しでも余裕資金が生まれたら、すぐに繰り上げ返済しなければいけないと思っている方もいます。
しかし、繰り上げ返済にはデメリットもありますので知っておいた方が良いでしょう。
万一の場合のデメリット
繰り上げ返済の最大のデメリットは手元の現預金が減少することです。
今は使い途の無い余裕のお金だと思って繰り上げ返済しても、時間が経過してお金が必要になることはあります。
例えば、病期やケガによって治療費が必要になることもありますし、子供の学費が予想以上に必要になるということもあるでしょう。
また、ご自身や同居の家族だけでなく、両親なども含めた親族に問題が起こる可能性もあります。
一度繰り上げ返済を行うと、その後に取り消しして、お金を戻してもらうということはできません。
そのため、繰り上げ返済後に万一の事態が起きて、その時点の預金を超える額のお金が必要になってしまうと、別途お金を借入するなどの必要があります。
通常、個人がお金を借入する方法として、最も金利が低いのは住宅ローンです。
カードローンや、教育ローン、マイカーローンなど、他の無担保借入を利用すれば、住宅ローンよりも高い金利になる可能性が高く、むしろ、繰り上げ返済を行って損してしまうという可能性もあります。
住宅ローン控除のデメリット
また、繰り上げ返済によって住宅ローン控除を受けられる額が減少してしまう可能性もあります。
住宅ローン控除は年末時点の住宅ローン残高に対して1.0%(最大40万円)の税金還付を10年間に渡って受けられる制度です。
住宅ローン控除は住宅ローンの残高の1.0%というのがポイントです。
仮に、住宅ローン残高が4,000万円の方が、1,000万円の繰り上げ返済を行うと、その年以降で受けられる税金還付の額が年間で10万円減少する可能性があります。
近年の住宅ローンの借入金利は1.0%未満のものが多く(変動金利・最大優遇を得られれば0.5%未満もある)、繰り上げ返済によって損してしまうということもあります。
団体信用生命保険のデメリット
住宅ローンには生命保険に似た役割もあります。
住宅ローンの借入時には通常、団体信用生命保険に加入します。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの借入人に万一のことがあって死亡してしまった場合、保険会社が代わりに住宅ローン残高を支払ってくれるものです。
そのため、遺族に住宅ローンを残さず、無借金の自宅のみを残すことができます。
こういった住宅ローンと団体信用生命保険の機能を活用して、住宅ローンを生命保険の一部として考えている方もいます。
団体信用生命保険の保険料は銀行負担ですので、住宅ローン利用者には費用負担もありません。
繰り上げ返済を行わないままで死亡した場合、現預金と無借金の住宅を残すことができます。
一方、繰り上げ返済を行うと、預貯金はその分減少してしまいますので、残せるのは住宅だけになってしまいます。
つまり、繰り上げ返済には、生命保険としての金額を減少させてしまうデメリットがあります。
繰り上げ返済をしない方がいい人
住宅ローンの繰り上げ返済は総返済額が減ることなど、メリットしか感じられないかもしれません。
しかし実は繰り上げ返済をすることで、家計がピンチになってしまう場合もあります。
どのような人は繰り上げ返済をしないほうがいいのか見ていきましょう。
預貯金がない人
住宅ローンの繰り上げ返済は資金に余裕ができたら行うものです。
中には貯金をするよりも繰り上げ返済をするほうがいいという意見もあります。
確かに、預貯金でもらえる金利よりも、住宅ローンで支払う必要のある金利の方が高いのが一般的であり、貯金にまわす余裕があるならばその金額を繰り上げ返済にまわした方が総返済額を減らすことができてお得に感じるでしょう。
しかし、それが通るのはもともと貯金が豊富にあるという人に限られます。
今現在の預貯金が少ないという人が、貯金よりも繰り上げ返済を優先させると、急にお金が必要になったときに対応できなくなってしまいます。
大きな家電がこわれた、身内に不幸があった、急病で入院しなければならないなど、急に大きなお金が必要となる場面は数多くあります。
少なくともそれらの事態が起こっても対応できる程度の預貯金は用意しておかなければ、住宅ローンどころではなくなってしまうでしょう。
繰り上げ返済は、誰でも必ずすべきものではなく、ある程度の貯金があるという人が行うべきだと言えます。
住宅ローン減税中にすると損?
繰り上げ返済を住宅ローン減税の適用中に行うと損をするという話も耳にしますが、本当なのでしょうか?
結論から言うと、住宅ローン減税適用中の繰り上げ返済で損をするかどうかはケースバイケースです。
人によっては、住宅ローン減税が終わった10年後に繰り上げ返済をする方がお得になるという人もいますが、全員に該当する話ではありません。
特に、低い金利で借りている人ほど、住宅ローン減税が終わったあとに繰り上げ返済をするほうがお得になる傾向にあります。
そのため、高めの金利で借りている場合は、10年経過を待たずに繰り上げ返済を行うほうがお得になる可能性もあります。
また、一般的な住宅ローン減税は、住宅ローン残高が4,000万円までの分に対して適用されます(40万円×10年間)。
住宅ローンの借入残高が4,000万円よりもずっと大きな額になっている方の場合は、繰り上げ返済を行っても、住宅ローン減税の適用額は変わらないケースがあります。
金利などの条件によっても、繰り上げ返済の結果は違ってくるため、繰り上げ返済前にシミュレーションをして自分がどのケースに当てはまるのか確認をしておきましょう。
ただし注意が必要なのは、繰り上げ返済によって借入期間が10年を下回ってしまった場合です。
住宅ローン減税が適用されるのは借入期間が10年以上の場合のみです。
そのため、期間短縮型の繰り上げ返済を利用することによって借入期間が10年以内となってしまった場合は、その時点で住宅ローン減税が打ち切られてしまいます。
それによって100万円単位で損をしてしまうケースもあるため、注意が必要です。
再借入れが可能な住宅ローン
一般的に、一度住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、その後、やはりお金が必要になって、もう一度借入したいと考えても、対応してもらうことはできません。
そういった意味では、繰り上げ返済は一方通行であるため、本当に余裕のある資金なのか、繰り上げ返済を行って良い資金なのかを慎重に検討しておく必要があります。
しかし、一部の銀行の住宅ローンでは、一度繰り上げ返済を行っても、その返済額の範囲内で、返済額を猶予してもらうことができる住宅ローンも存在します。
その代表的な住宅ローンが、新生銀行の住宅ローンです。
新生銀行には、「コントロール返済」のサービスがあり、一旦繰り上げ返済を行うとその金額の範囲内で、以降の元金返済をストップすることができます。
そのため、繰り上げ返済をし過ぎたことで、毎月の負担が重い、資金の余裕が無いという事態に対応することが可能です。
住宅ローン借り入れ後に、繰り上げ返済を積極的に行いたいと考えている方には、新生銀行の住宅ローンもおすすめと言えるでしょう。
なお、新生銀行は住宅ローンの繰り上げ返済手数料も無料で利用できます。
繰り上げ返済手数料が無料の銀行
同じく、繰り上げ返済を積極的に活用したい方にとって、おすすめとなるのは繰り上げ返済手数料が低い住宅ローンです。
せっかく繰り上げ返済を行っても、それ自体に手数料が発生していては、もったいない気がしてしまいますよね。
こんな時、お勧めしたいのは以下の繰り上げ返済手数料無料で利用できる住宅ローンです。
au住宅ローン(じぶん銀行)
*2021年7月現在のau住宅ローンの金利
じぶん銀行とは三菱UFJ銀行とauを運営するKDDIが共同で設立したネット銀行です。
新興のネット銀行ならではの低金利とお得な団体信用生命保険の制度が魅力です。
もちろん、auユーザー以外の一般の方もau住宅ローンを利用できます。
2021年7月現在、au住宅ローンは変動金利は0.410%、10年固定金利でも0.525%で借入可能です。
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☆じぶん銀行のau住宅ローン
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*じぶん銀行は三菱UFJ銀行とauの共同設立のネット銀行
借入可能額(最大) | 2億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利 0.31%、10年固定金利 0.465%(2022年1月時点・au金利優遇割適用時) |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 一般団信・がん50%保障団信の保険料が無料、一部繰上返済手数料が無料 |
変動金利・10年固定金利は業界最安水準 50%がん保障特約付き団信が無料で利用可能 保証料・繰り上げ返済手数料などが無料
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行は、住宅ローンの借入金利が業界トップクラスに低いことで人気のある住宅ローンです。
さらに、全疾病保証に無料で加入できますので、住宅ローン借り入れ後の万一の事態にも安心して利用することができます。
さらに、住信SBIネット銀行では、繰り上げ返済が一部、全額ともに無料で利用できます。
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<住信SBIネット銀行の審査基準は厳しいのか?>
また、住信SBIネット銀行の同条件の住宅ローンを、店頭・対面で相談しながら借入することも可能です。
これは、SBIマネープラザが実施しているサービスです。ネット銀行でなく、対面型で住宅ローンを借入したい方はこちらがおすすめです。
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★SBIマネープラザの住宅ローンサービス
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住信SBIネット銀行と同水準の低金利
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借入可能額(最大) | 2億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利 0.41%、10年固定金利 0.53% (2021年7月時点) |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 団信・全疾病保障付(金利上乗せなし) |
*SBIマネープラザは完全予約制のため、ご希望の方は上記から予約してご利用ください。
フラット35(住信SBIネット銀行)
フラット35とは公的な金融機関(住宅支援機構)が貸し付けを行う住宅ローンです。
そして、フラット35は公的な住宅ローンということもあって、繰り上げ返済の手数料が無料という特徴があります。
そのため、お金に余裕が出た時には、積極的に繰り上げ返済を行って、総返済額を少なくすることができます。
さらに、フラット35には以下のようなメリットがあります。
- 借入期間全期間の固定金利
- 長期優良住宅なら優遇金利が適用
- 審査に通りやすい(転職後、自営業などでも借りやすい)
- 団信に加入できなくても借入できる
繰上げ返済などでお得な住宅ローンを探しているのなら、フラット35も検討に加えましょう。
なお、フラット35は借入する銀行で金利などの条件が異なります。
2020年現在、最も金利などでお得なフラット35としておすすめは住信SBIネット銀行です。
買取型、保証型が選べ、金利水準は銀行業界トップクラスです。
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☆フラット35なら金利がお得な住信SBIネット銀行
☆長期固定金利で安心して借入できる
☆団信加入は任意で選択可能
☆審査規準が解りやすく利用しやすいのも特徴
借入可能額(最大) | 8,000万円 |
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適用金利・手数料など | 35年間固定金利 1.5%(2023年6月現在・保証型:自己資金10%以上) |
その他優遇など | 借入期間を通して固定金利 |
まとめ
住宅ローンは繰り上げ返済をすると、総返済額を減らせる効果があります。
期間短縮型の繰り上げ返済の場合は借入期間を短くすることができ、返済額軽減型で繰り上げ返済すると毎月の返済額を減らすことができます。
どちらの繰り上げ返済を選択するのかは家庭の事情によって違うため、自分がどのタイプで繰り上げ返済をするのか事前に考えておきましょう。
また、預貯金がほとんどないという人が繰り上げ返済をすることは危険です。
急に大きな出費が必要となった場合に預貯金がないと対応できないため、繰り上げ返済をする場合は預貯金に余裕がある場合に限られることを覚えておきましょう。
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