“給料ファクタリング”は、消費者金融からお金を借りることに抵抗のある人でも、お給料を前借りする感覚で気軽に手を出しやすいと人気が高まっています。
需要が高まる一方で、給与ファクタリングに対する正しい認識をもっていないが故にトラブルに巻き込まれるケースが問題となっています。
貸金業や給与ファクタリングについて、分かりやすく解説していきます。
金融庁で貸金業にあたると認定された
事業として融資を行う場合、貸金業登録を行っていないと法令違反になります。
貸金業を営むにあたっては、各都道府県や財務局へ営業の登録を行った上で関連する法律に基づいて営業を行う必要があるのです。
しかし、融資に似たサービス(例えば、クレジットカードのショッピング機能など)でも、貸金業登録の対象にならないものもあります。
《貸金業に該当する例》
- 消費者金融
- キャッシング機能のあるカード会社
- 信販会社
- 事業者金融業者等
《貸金業に該当しない例》
- ファクタリング
- 個人間の貸借
- クレジットカードのショッピング機能
- 雇用者からの前借り 等
今回のテーマである給料ファクタリングは、「ファクタリング」という名前が付いているので一見すると貸金業に該当しないように思えますが、れっきとした貸金業です。
給与ファクタリングを貸金業と扱うことは金融庁のHPにはっきりと明記されています。
「給与ファクタリング」などと称して、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
金融庁HPより抜粋 https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
2016年頃から「給料の前払い」「借金や貸金ではない」といううたい文句で増加してきた給与ファクタリングですが、当時は本当に貸金業の対象外でした。
そのため以前は、給与ファクタリングは貸金業者でない事業者でも取り扱い可能であり、違法ではありませんでした。
しかし2020年3月、金融庁は「金融ファクタリングという金融取引について貸金業にあたる」との見解を発表したのです。
そのため、現在は給与ファクタリングを行うにあたっては貸金業登録を行っている事業者(いわゆる貸金業者)でないと取扱いできなくなく、法定利息に従ったファクタリング料である必要があります。
現在は、給与ファクタリングは貸金業に該当するという点が非常に重要です。
給与ファクタリングが貸金業となるワケ
本来のファクタリングとは、企業間の売掛債権などを対象として行われる取引のことであり、世界的にもメジャーな資金調達方法です。
ファクタリングは債権譲渡代金の交付がベースとなっているので、法律上の貸付に該当しません。
そのため、企業が売掛金を流動化するファクタリング取引は現在も貸金業の対象ではありません。
一方で給料ファクタリングの仕組みは、本来貸金業に該当する、「売渡担保その他これらに類する金銭の交付」にあたるのです。
《本来のファクタリング》
- 債権を売買して資金を調達
- 買い取った債権の代金回収は、買い取りを行ったファクタリング業者が行う
これが本来のファクタリングです。
仮に給料ファクタリングが本当にファクタリングであるのならば、『債権の売買』『ファクタリング業者による代金回収』が行われなければなりません。
実際の給料ファクタリングの仕組みを見てみると、未来に振り込まれるであろう給料を担保に一時的にお金を借りているにすぎません。
また代金回収も利用者自身が行っているため、債権の売買による資金調達であるファクタリングとは全く性質が異なるのです。
簡単に言うと『売掛金の権利を売買するのがファクタリング』『給料がもらえることを担保にお金を借りるのが給料ファクタリング』です。
ファクタリングという名前こそついていますが、給与ファクタリングの中身は貸金ということになります。
そのため政府は、給料ファクタリングを提供する業者は“貸金業者”であり、貸金業としての登録及び関連法の遵守が義務付けられるという見解を示したのです。
従来、給与ファクタリングを提供していた事業者の多くは貸金業登録を行っていませんでした。
そのため、給与ファクタリングを利用する際には、事業者が正規の貸金業者であるかどうかの確認が重要になります。
給与ファクタリングの違法業者(ヤミ金)が逮捕された
2020年頃から、給料ファクタリングの違法業者が逮捕されるケースが全国的に見受けられるようになりました。
例えば、2021年2月には「日本強運堂(東京)」や、2021年1月に「ZERUTA(東京)」、2020年12月には「一般社団法人ハートフルライフ協会(東京)」といった事業者が逮捕されています。
ZERUTAは「七福神」の名称で給与ファクタリングを取り扱っており、2021年2月現在、集団訴訟も起こされています。
逮捕される理由としては、貸金業の登録をしていないことや悪質な取り立て行為・法外な手数料などの違反行為があったからです。
冒頭で解説したように、給料ファクタリングは貸金業としての扱いとなるため、業を営むにあたっては各都道府県や財務局への登録が必要となります。
また貸金業に関する法律を遵守しなくてはなりません。
貸金業に関する法律は「貸金業法・利息制限法・出資法」の主に3つであり、これらは立場が弱くなりがちな利用者を悪質な貸金業者から守るための法律です。
- 金利の上限を定める
- 借入内容などの個人情報を守る
- 家族や知人に肩代わりさせることを規制
- 電話や訪問など不適切な取り立てが行われないよう規制
3つの法律がセットになることで法の抜け目をカバーし、貸す側・借りる側のトラブルを防止し健全な関係性を保つことができます。
これらを守らない給料ファクタリング業者は、違法業者(いわゆるヤミ金業者)であるため、警察の取り締まり対象となります。
しかし、これらの情報をあまり知らないまま給料ファクタリングを安易に利用してしまい悪質な業者とのトラブルに発展するケースが急増しています。
貸金業登録を行っていない事業者から給料ファクタリングを利用することは絶対に避けましょう。
給料ファクタリング利用時の注意事項
一時は数えきれないほどの給料ファクタリング業者がありましたが、“給料ファクタリングは貸金にあたる”という政府の見解が発表されてからは、多くの業者がサービスを停止しました。
これは、「貸金業登録をしなければ続けていけない」「貸金業法を守った契約でないと逮捕されてしまう」ということで継続困難と判断した業者が多かったものと推察されます。
では、今現在残っている給料ファクタリング業者はすべて安全なのかというと、そうではありません。
現在の給料ファクタリング事業者の中には、貸金業登録をせずに高額な手数料をふっかけてくる悪質な違法業者が残っていると考えられます。
そのため、安易に申し込むのではなく、安全な業者か否か、正規の貸金業者であるかを消費者側がしっかりと見極める必要があります。
法人登録がされている
起業する以上、どんなに小さい会社でも法務局に法人登録をする必要があります。
法人登録されていれば、歴とした会社として運営しており「業者と連絡が取れなくなって泣き寝入り」という事態を防ぐ安心材料となります。
会社の法人登録内容と、HP上の会社情報が一致しているかどうかも併せて確認しましょう。
貸金業登録がされている
「登録貸金業者情報検索サービス」という金融庁のHP内サービスから検索をすることができます。
給料ファクタリングを提供している会社はこのデータベースに登録されている必要があります。
手数料の上限は20%
給料ファクタリングがファクタリングと見なされていた頃は、20%以上の手数料を取る業者もたくさんありました。
そのため「給料ファクタリングの手数料は平均20%~40%などと書かれているサイトもいくつか存在します。
政府の見解が出てからは、貸金業扱いなので上限金利は20%です。
これらの点に注意して、給与ファクタリング業者を選ぶようにしましょう。
弁護士への相談も検討しよう
万が一、貸金業登録のない業者や、悪質な給与ファクタリング業者を利用してしまった・申し込みをしてしまったという場合は落ち着いて第三者に相談することが推奨されます。
弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談し、今後の指示を仰ぎましょう。
法律のプロですので、的確なアドバイスをしてくれます。
金融庁のHPや警視庁のHPでは、悪徳業者に関する相談窓口が紹介されていますので、そちらを利用するのも良いでしょう。
違法業者(ヤミ金融)はあの手この手で利用者を強請ってきます。
契約を結んでしまってからでは、個人で解決することは難しいケースも多くなってきます。
一人で抱え込まずに、第三者の協力を仰ぎながら上手に悪徳業者との手を切っていきましょう。
まとめ
給与ファクタリング自体は、違法行為ではありません。
問題となっているのは、給与ファクタリングは貸付(貸金)扱いとなるため、貸金業登録をする必要があるということです。
貸金業登録をせずに事業を営んでいる事自体が違法となりますし、貸金業として登録している以上、貸金業法を守った運営を行う必要があります。
給与ファクタリングを使ってお金を調達しようと考えている方は、まず『貸金業登録をしている業者なのか否か』を確認し、『法律を遵守した適切な手数料となっているか』という点に注意しながら業者を選んでいきましょう。