事業性資金を銀行から調達することを検討しているにも関わらず、なかなか審査に通らず困っている経営者もいるでしょう。
・銀行の融資審査に落ちる理由とは?
・経営者/財務担当の何がいけなかったのか?
・融資を断られる顧客にならないようにするにはどうしたらいいのか?
今回は、銀行融資を断られる理由とその対処法について、元銀行融資担当であり、資金調達のサポートを行っている専門家としての観点から分析したいと思います。
銀行への相談はアポを取ってから
非常に基本的なことからの解説です。銀行に融資相談する場合、アポなしで急に銀行に相談に行くのは辞めましょう。
銀行の支店窓口の営業時間だからと、約束もせずに急に相談に行ってしまう経営者がいますが、これは審査に落ちる理由となります。
銀行に突然来店すると、銀行員はかなり迷惑したり、非常識な相手と認識するなど、ネガティブな印象を持たれます。また、そもそも、営業時間中の銀行では、融資担当者は取引先を訪問していることが多く、店舗内に残っている方は少数です。
理由があって店舗にいる忙しい銀行員を無理やり捕まえて相談しても、まともに対応してもらえないことも多くあります。急な訪問は審査に落ちる理由になりますので注意して下さい。
銀行は面談前に下調べが必要
銀行の融資審査では、何よりも最初に確認しなければならないことがあります。
それは申込者が「反社会的勢力(以下:反社)ではないか?」ということです。銀行ではこれを「反社チェック」と呼んでいます。銀行は業界的にも反社勢力への融資を禁止しているため、反社と認定される法人や個人とは取引を行いません。
反社会的勢力とは、暴力団や、詐欺などの犯罪行為を行う方のことです。
法人であれば会社名、社長の個人名、個人事業主なら本人や保証人などをもとに確認します。銀行では、銀行協会などを通して、警察が保有しているデータベースへの照会が可能です。
反社に該当した相手とは、融資・預金など銀行は一切取引をしません。そもそも、反社であると解れば、面談することも避けるため、相談前に確認しておくのが一般的なルールです。
そのため、反社チェックも行っていない状況で融資相談をされても、銀行員は積極的に相談することができません。前向きな回答をした後に、反社チェックに該当すると、その後に断るのが難しくなります。そのため、アポ無しの来店で相談するのはマイナスになります。
資金繰りが厳しいという印象
銀行の融資審査では、貸したお金を問題無く返済してもらえるのかということが確認されます。そのため、「倒産」の兆候がある会社と取引するようなことはしません。
お金を借りる相談をするのに、「お金に困っている印象を持たれて何が悪いの?」と思われる経営者もいるかもしれません。しかし、これは重要なことです。
事業が好調で返済に問題がない法人や自営業者の場合、慌てて銀行に相談に来なくても、既に取引のある銀行が率先して融資を提案します。そうでなくても、しっかりとした経営者は、早めに資金計画を考えて、計画的に銀行に融資の相談を行います。
いきなり『金を貸して欲しい』と窓口にくる経営者というのは、あてにしていた銀行から断られたり、資金繰りが丼勘定になっていて気付かなかったという方が多く、「資金繰りに相当困っている」というネガティブな印象を銀行に与えます。
つまり、アポを取って、約束の日を待つだけの余裕がないという印象を与えてしまうのです。
資金繰りに厳しい、倒産の兆候がある会社という印象を与えると、その時点が銀行員は融資を断るための準備を始めますので、その後に挽回するのは難しくなります。
他行で断られた履歴もNG
まれに、銀行に相談に来店される経営者のなかに、融資申込のための必要書類の準備が良すぎる方がいます。通常、余程何度も銀行から借入した経験豊富な経営者でもない限り、銀行から必要書類を案内しなければ、何を用意すべきかは解りません。
また、銀行員としても最初の相談段階、実際の融資申込など、段階に応じて必要書類を依頼します。
しかし、初めての来店、相談にも関わらず、決算書3期分、印鑑証明、登記簿謄本、代表者個人の本人確認書類などを見事に準備されている経営者がいます。こういった経営者の行動は、準備が良いと評価されるどころか、銀行の融資審査に落ちる理由となります。
不思議に思われる経営者もいるかもしれませんね。しかし、銀行への書類準備が良すぎる方というのは、他行の審査に落ちた方の可能性が非常に高いと銀行員に推測されます。
他行に融資審査を申込むにあたって必要書類を提出したけども、審査に落ちてしまったため提出された書類が返却され、その書類をそのまま持参して銀行に来られる経営者がいるのです。
他行で断られたと判断される(推測も含めます)と、それだけでも銀行審査に落ちる理由となります。
自分達の調査や審査で悪い部分が見つからなかったとしても、他の金融機関の審査で落ちる理由があるはずです。そのため、審査に落ちたと推測される法人や、個人事業主に対しては、銀行担当者も融資したくありません。
アポをとって銀行員に来てもらう
銀行窓口へ突然の来店が審査落ちする理由になるということであればどうすべきでしょう?答えは簡単です。まずは『融資について相談したい』と銀行に電話をしてみましょう。
そうすれば、銀行からは『折り返し連絡いたします』と回答されるでしょう。銀行では、その後、相談するのに良い担当者が決められ、必要な下調べを行います。
そして銀行から『融資相談のために銀行店舗ではなく、希望者の事務所に訪問します。そのときにご用意頂きたいものは・・』と電話が入れば、少なくとも融資審査に通るための第一関門に突破できたと言えるでしょう。
なぜかというと、電話連絡でも相手の名前や住所などがわかれば、銀行は手持ちの情報であらかたの下調べや、この相手に融資できる見込みがあるか?という事前調査を行っています。忙しい銀行員ですので、融資の見込みが無い経営者に、わざわざ会いに行くということは行いません。
一般的な経営者の方が思っている以上に、銀行は様々な情報を持っていたり、調べることができます。
例えば会社の銀行口座があれば、所在地、設立年月日、業種など当然銀行は知っています。
会社名(個人なら事業者名)がわかれば、大まかな業況、経歴などは銀行が利用する信用調査会社(帝国データバンクなど)にアクセスして把握できるのです。
こうした情報は、個人情報保護法でいう書面による個人情報取り扱いの同意を得なくても、自由に銀行が閲覧できる情報です。
ですから「折り返し銀行から連絡が来た」ということは、下調べをした結果、融資希望者の状況が、銀行の融資基準内にあり、融資審査に通る可能性があるということを意味します。もちろん、その後の面談や、必要書類の提出によって、審査に落ちる可能性はありますが、一旦は、その土台にあがったということになります。
銀行員の態度に注意
銀行員からの折り返しの連絡がもし『ご来店ください』という場合の温度感であった場合、最初の下調べの結果としての評価が低いことも推測されます。銀行員が法人融資などの事業性資金を融資する場合で、最初の面談で来店を促すというのは消極的な姿勢であることを示しています。
つまり(銀行から見て)こちらから出向くほどの相手ではない、ということになるからです。
ですから『こちらから伺います』の方が期待度は高まります。
銀行員に来てもらうメリットは他にもあります。(次項で説明)
『できれば銀行員の方にこちらに来ていただきたい』と最初の連絡で訪問希望を伝えることが大事です。
事務所を見てもらう必要がある
銀行員に会社・事務所・工場・店舗などの仕事場を見せることは意外に重要です。銀行員に現場を見せることが融資への近道となります。
銀行員は上司から『現場を見て判断しろ』と口酸っぱく教育されています。相手のことを知らなければ融資取引はできません。「相手を知るにはまず訪問をして社長に会い会社や仕事場を見てこい!」と日頃から指導されているのです。
融資に至る可能性が高い場合、銀行内で審査に稟議書を提出するうえで現場を見ていることは必要条件になりますので、1度は、必ず融資先の事務所を訪問する必要があります。ですから銀行員は、自分が興味を持った資金調達希望者のところには喜んで訪問します。
あなたとしても、静か過ぎるくらい静かな銀行窓口より、自分の懐に銀行員が来たほうが話もしやすいでしょう。また自分の仕事について現場や商品を見せながら直接説明できます。
銀行の審査では、融資先の事業内容を正しく理解できることが重要です。事業内容とは、「業種」という簡単なものではなく、「誰に・何を・どのように販売して利益を生み、当社の強みがどこにあるのか」という詳細なものです。
つまり融資を受けるために、事務所来店してもらい、実際の事業の現場を見てもらうことが、これ以上ない有効なアピールになります。
逆に見せられない(見られたら困る)ような事務所や、工場、店舗では当然ながら融資を受けることはできない、ともいえるのです。
審査のメインは決算書
ここまで実際の審査に至るまでの入口とも言うべき基本的な審査に落ちる理由を説明してきました。しかし、銀行融資の審査において、やはりメインとなるのは決算書です。
銀行の融資可否や、審査に落ちる理由の大部分は決算書にあります。
決算書で重要なポイントには以下のような点があります。
・利益が出ているか?
・売上、利益は増加傾向にあるか?
・融資が必要な理由は?(決算書からの分析として)
・資本の部の状況(過去からの利益の蓄積や債務超過でないか)
・必要運転資金の額
・役員への貸付、滞留在庫など、不明瞭な資産がないか?
・借入が過剰ではないか?
・粉飾がないか?
銀行の審査では、様々な角度から決算書を分析します。そのうえで、疑問に思った点を経営者にヒアリングされるでしょう。中小企業経営者としては、自社の財務状況や、資金繰りも良く把握しておく必要があります。
経営者が経理や、税理士に任せているので内容は解らないという場合、それだけでも審査に落ちる理由となりますのでご注意下さい。
融資申込額は妥当か?
銀行の融資審査では、「融資申込額が妥当な金額か」や「資金使途」という点も重要なポイントとして確認されます。
運転資金であれば、決算書などから計算される「必要運転資金額」の範囲内での申込であるか、設備資金であれば、見積書などで確認できるかが重要です。しっかりとした必要融資額を確認せず、曖昧な金額や、いい加減な見積もりでは審査に落ちるでしょう。
確認できる必要資金額を超えて申込を受けた場合、審査に落ちる理由となります。必要以上の金額を希望されるということは、実は銀行に相談されている内容には嘘があり、銀行員を騙そうとしていることも考えられます。
経営者としては、融資が必要な額を説明するための準備をしておく必要があります。
返済原資がある
銀行の審査に通過して、融資を受けるには返済原資を用意しておくことが大切です。
銀行の審査において重要なのは、貸したお金が間違いなく戻ってくると納得できることです。そのために、融資先に返済原資があることを確認する必要があるのです。
銀行融資に対する代表的な返済原資には、大きく分けて以下の2つがあります。
①既存の収益から生まれる利益を原資とする
②融資を受けたことで始める(大きくする)事業の収益を原資とする
銀行の融資審査で重視するのは①です。既に発生している収益によって返済できる方が審査には通りやすくなります。これから生み出すであろう収益によって返済する場合、合理的に事業が成功する可能性が高くないと、銀行の審査では認められません。
どのように収益を生み出して、銀行融資に返済するのかを明確にしておかないと審査に落ちる理由となりますのでご注意下さい。
事業の内容を伝える
銀行の融資審査において、担当者は稟議書を作成し、支店長や審査部などの決裁を得る必要があります。
そして、稟議書には、決算書の情報などをまとめた定量情報だけでなく、事業の内容や、代表者の人物像が解るような定性情報も記載する必要があります。
事業の内容といっても、業種や、取扱商品などの簡易的なものではありません。「何を、誰に、どのように販売しているのか」といった基本的なことから、企業の強みとなる特徴や、主な取引先など、様々な情報が必要となります。
融資を希望する経営者としては、自社商品が解る資料を準備するとともに、銀行員から質問を受けた場合には、丁寧に答える必要があります。内容によっては、口頭で説明するだけでなく、資料を作って説明することも重要です。
銀行員に事業や、企業の特徴、ビジネスモデルが上手く伝わっていないと、稟議書を上手く作成できず、それが原因で審査に落ちるということもあり得ます。
急ぐならファクタリング
銀行から融資をうけるためには時間がかかります。相談から申込、審査を経て、実際に融資を受けるまでには、1ヶ月前後必要となることも少なくありません。
しかし、それでは間に合わないという経営者も少なくないでしょう。
こんな時、銀行員を急かして、結果を急ぐというのは逆効果です。
融資を極端に急ぐ企業の場合、銀行では保守的に対応して、場合によっては融資を断ります。時間があれば融資を出来る場合でも、時間が無いということが審査に落ちる理由になるのです。
時間が無くて十分な審査が出来ないうえに、時間を掛けた結果として審査に落ちた場合の影響が大きいため、早めに断ってしまうということです。
そのため、急ぎで資金調達が必要な経営者は、銀行ではなく、ファクタリングやビジネスローンを活用するのがおすすめです。
ファクタリングや、ビジネスローンでは、数日程度の短期間で審査結果が得られるうえ、審査基準も銀行より緩くなります。
銀行融資に比べて、金利は割高になりますが、銀行融資を受けられるまでの「つなぎ資金」として上手に活用するのが良いでしょう。
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まとめ
中小企業や、個人事業主の経営者を対象として、銀行融資を受けるためのポイントを解説しました。特に、銀行の審査に落ちる理由をポイントとして、どのように審査に受かるための対応をすべきかを重視しています。
銀行から融資を受け、資金繰りを安定させるのは、中小企業経営者にとって重要な役割です。
ポイントをおさえて、銀行を上手く活用できるようにしましょう。