家族構成の変化や、子供の成長、さらには転職などで勤務地が変わることによってマンションの住み替えが・買い替えが必要になってくることもあるでしょう。
マンション売却時には仲介を依頼する不動産業者に任せっきりにするのではなく、売買価格に加え、売買契約書の内容、引き渡し準備、決済、そして新たに借入する住宅ローンなどについてしっかりと確認、準備することが大切です。
今回はマンションの売却・買い替えを決意した時に知っておきたい注意事項を整理してご紹介します。
売買価格の決め方
マンション売却時に思うことは「少しでも高く売りたい」ということでしょう。売却後に新たにマンションを購入するだけでなく、賃貸に転居する場合でも諸費用が必要となります。
お持ちのマンションを高く売却できれば、諸費用や購入代金の足しになりますので、少しでも高く売却したいというのは当然の考えです。
そのため、出来るだけ高い価格でマンションを売りに出したいと考えがちですが、高ければ良いというものでもありません。近隣相場などに比べて高すぎる価格で売りに出すと、買主候補者が見つからないままに時間だけがかかってしまうこともあります。
既に次の転居先となるマンションを購入してから売却に出すケースなど、成約までに時間がかかると費用がかかって損になることもあります。さらに、売れないままに長時間が経過すると、不動産業者などの間で人気の無いマンションという印象を持たれてしまうこともあります。
そうならないためには、適正な売買価格の範囲内でできるだけ高い価格を設定して売りに出すことが大切です。
しかし、マンションの適正な売買価格を見極めるのは簡単ではありません。
マンションの適正な売買価格を判断するために大切なのは、複数の不動産業者に査定を依頼して、複数の査定書を比較して相場を知ることです。
一社だけの不動産業者に依頼した場合、すぐに売却するために低すぎる査定価格を出したり、逆に、他の業者に仲介業務を取られてしまわないように、現実離れした高すぎる査定価格を出しても気付けないという問題が起こりやすくなります。
そのため、複数の不動産業者にマンション売買の査定や仲介を依頼して、それぞれの評価価格を参考として売却希望価格を決定する必要があるのです。
なお、マンションの売却価格の査定は不動産業者の店舗に直接来店したり、手間のかかる面談を行わなくても、インターネット経由で簡単に依頼できます。
対象となるマンションの住所や名称、広さ、間取りなどをインターネット上で入力(5分程度で完了)すれば、1週間程度で査定結果が送られてきます。
もちろん、不動産売却価格の査定だけなら手数料も必要ありませんし、売却依頼を行わなくても問題ありません。
▼不動産の売却価格査定を無料で行っている会社例
媒介契約には種類がある
売却できそうなマンション価格が解り、実際に売りに出すには不動産業者に依頼するのが通常です。その時、不動産業者と締結する「媒介契約」には種類があります。
どの媒介契約を選択するかでマンション売却の成否にも大きな影響があります。
<媒介契約の種類>
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
契約有効期間 | 原則なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
自己発見取引 | 認められる | 認められる | 認められる |
他業者への依頼 | 可能 | 不可能 | 不可能 |
依頼主への報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
媒介契約の種類を簡単に説明すれば、複数の不動産業者に並行して依頼できるのか、特定の不動産業者にのみ依頼するのかの違いと言っても良いでしょう。
不動産業者としては確実に自分達で売主を見つけて、仲介手数料を得るために、他の不動産業者へ並行して依頼できない「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を希望するでしょう。専属専任媒介契約の場合、売主自身が見つけた相手であっても売却することはできなくなります。
一方、売主の立場としては、一般媒介契約によって複数の不動産業者を競わせた方が価格や、売却までの期間で良い結果が得られる可能性は高くなります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合、他の不動産業者に先を越される可能性が無いため、不動産業者は優先して売りたい物件が他にあると、後回しにされてしまう懸念もあります。
しかし、依頼する不動産業者が多ければ良いということでもありません。
競わせる不動産業者が多すぎると、自社で成約できる可能性が低いと判断して、それぞれの不動産業者がやる気を失ってしまうこともあります。そのため、2~3社程度の不動産業者と一般媒介契約を締結して、マンション売却を依頼するのが適当と考えられます。
売買契約書は細部まで確認する
マンションの売買となると金額も大きく、一度締結すれば簡単に契約解除することができなくなります。さらに、後から不利な条件が付いていたと知っても、知らなかったでは済まされません。
そのため、不動産業者から渡された売買契約書を事前に細部までしっかりと確認しておく必要があります。
マンションの売買契約書で最低限チェックしておくべきポイントには以下があげられます。
①物件情報
所在地や床面積など登記薄謄本に記載されている情報が記載されます。ここに記載された不動産が売買の対象になります。
②売買代金
マンションを売却する金額です。合意した金額に間違いがないかを確認します。
③売却時期
マンションの所有権がいつ売主から買主に移転されるのかを確認します。一般的には、売買代金が支払われた日に、所有権が移転して引き渡しとなり、登記手続きが行われます。
④契約解除の条件・違約金の金額
不動産売買は大きな金額を伴う契約でもあり、買主の都合によって契約解除を求められることもあります。将来的なトラブルを回避するためにも、双方の都合などで契約を解除できる条件や、その場合の違約金の金額を確認しておく必要があります。
⑤瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、売買するマンションに不備(瑕疵)があった場合に、売主がいつまで責任を負うのかを明確にしておくための項目です。
マンション売買が成立する前に、買主は対象となるマンションを内覧して購入を決定します。しかし、短時間の内覧ではマンションの瑕疵を全て把握することは困難です。対象となるマンションに関しては売主と買主で情報量に差があるため、買主は不利になってしまいます。
そのため、売買契約や引き渡しを終えた後に買主が瑕疵を見つけた場合であっても、買主が保護されるように瑕疵担保責任が設けられています。瑕疵担保責任が認められる期間内においては、契約が成立した後であっても、一定の責任を求められる可能性があります。
買主は瑕疵によって損害が生じた場合、売主に対して損害賠償請求をすることができますし、瑕疵により契約目的自体が達せられない(住むことが出来ないなどの)場合には契約を解除することもできます。
瑕疵担保責任の期間は、売り主と買い主の双方の同意で決められますが、契約書に期間を定めない場合でも法律(民法)上の責任期間は発生します。民法上、買主が瑕疵担保責任による権利を行使できる期間は、買主が事実を知ったときから1年以内であり、引き渡しから10年経過すると消滅時効にかかります。
10年という長期間の瑕疵担保責任を負うのは、売主にとって負担が大きすぎるとも考えられますので、瑕疵担保責任の期間は契約書で定めることができます。売買契約書上で10年以内の瑕疵担保責任期間を規定すれば、この期間が優先されます。
また、瑕疵担保責任を負わないとする特約を付けることもできます。
そのため、売買契約書に定める瑕疵担保責任の有無や、期間は良く確認しておく必要があります。
なお、売主が瑕疵を知っていたにもかかわらず、隠していた場合には、この特約は無効となります。そのため、マンションの売主として、判明している瑕疵は隠さず、説明しておくことが大切です。
⑥税金の清算時期・計算方法
固定資産税などの税金は特定の時点に所有者であるものに対して、1年間分の税金納付義務が発生します。
しかし、不動産売買においては、税金は所有期間に応じて、買主と売主がそれぞれで負担すべきであると考えられていますので、その年の税金を納付する方に対して、他方が所有期間に応じた金額を支払うのが通常です。
売買契約書においても税金の負担割合の計算方法や、その方法が規定されていますので確認しておきましょう。
手付金の種類と金額
マンションの売買時にも必ずと言って良いほど発生するのが「手付金」です。手付金は買主(購入希望者)が購入意思を明確にし、売買代金の前払いとして支払うものです。
マンションの売主にとって、手付金は多い方が良いと考えがちですが、必ずしもそうとは言えません。手付金には3つの種類があり、それぞれで手付金の持つ性質が異なりますので知っておいた方が良いでしょう。
証約手付
契約を結んだ証拠として買主が支払う手付金です。一般的には、5~10万円程度の金額で設定されます。
解約手付
マンション売買で授受されることが多い手付金がこの解約手付です。
解約手付は、売主または買主が何らかの理由で購入をキャンセルする場合に、相手側に支払われる手付金が「解約手付」になります。
また、買主が契約をキャンセルする場合、「手付放棄」となって買主が支払った手付金は売主が没収します。
一方、売主の都合で契約をキャンセルする場合は、「手付金の倍返し」と言って、違約金として預かっていた手付金の2倍の金額を売主に支払う必要があります。解約手付は一般的に売買代金の5~10%程度が目安になります。しかし、決まりがあるわけではありませんので、買主の資金力などをもとに、双方の話し合いで決められます。
違約手付
買主が債務不履行を行なった場合に没収できる手付金を意味します。債務不履行に対する違約金を事前に決めておくものであり、実際の債務不履行の金額が少額であっても、決めた額の違約金を支払わなければいけません。
マンション買い替えに適した売買時期
マンションの買い替えを前提とする場合、次に購入するマンションが新築か中古かによって、現在のマンションを売却(売買契約を締結)するのに適した時期が異なります。
それは、購入するマンションの引き渡し時期に新築と中古で違いがあることが原因です。
中古マンションの場合、購入することが決まると、すぐに売買契約を締結して物件の引き渡しを受けることができます。そのため、先に所有しているマンションを売却してから購入する方が良いでしょう。
マンション購入を先行して行って、所有マンションの売却に時間がかかると、現在の住宅ローンと次に購入するマンションのための住宅ローンを2重で借入する期間が発生してしまうことがあります。2重ローンになると返済負担が重くなってしまったり、そもそも審査に通らない可能性が高くなります。
そのため、マンションの売却先を探して、売却予定がたってから購入を進めます。
一方、新築マンションを購入する場合、売買契約を締結してから引き渡しを受けるまでには時間がかかります。建築中の新築マンションであれば、1~2年かかることも少なくありません。
そのため、新築マンションに買い替えするのであれば、購入のための売買契約締結後に所有マンションの売却を進めても、時間的な余裕を持って完了させることができます。
買い替えのための銀行相談
マンション買い替え時には、新しく購入するマンションのための住宅ローン相談も重要です。通常、マンション買い替え時には売却予定のマンションに対する住宅ローンが残った状態です。そのため、準備なく新しい住宅ローンの相談をしても、審査に通らず借入できない可能性があります。
マンション買い替え時の審査のポイントは以下です。
- 一時的でも2重に住宅ローンを借入できるか(返済能力が高いか)?
- マンション売却が買い替えの前か後か?
- マンション売却で既存住宅ローンを完済できるか?
- マンション売却がどこまで進んでいるか?(既に売り出し中かなど)
- 自己資金があるか?
マンション買い替え時に特に重要となるのは、「マンション売却によって住宅ローンを完済できるのか」、「マンション売却がどこまで進んでいるのか」です。
銀行の審査では住宅ローンを問題なく返済してもらえるかが重要です。
そのため、返済負担率などの基準によって、年収と借入額が無理なく返済できるバランスになっているかを確認します。しかし、この返済負担率には新たに借入する住宅ローンだけでなく、既存の借入も全て含まれます。
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返済負担率とは?自分で簡単に住宅ローンの借入可能額を計算できる方法
通常、住宅ローンを2本借入できる方は稀であり、かなり年収の高い方となってしまいます。いくら既存のマンションを売却予定であったとしても、既に売買契約を締結している場合などを除き、すぐに売却できるとは限りません。
そのため、銀行としても2重に住宅ローンを借入している状態が続けば、返済が滞ってしまう可能性も出てしまいますので、慎重に審査する銀行も多くなります。
こういったマンション買い替え時の問題を解消して住宅ローンを借入するためにおすすめできるのは、「相談できる銀行」で住宅ローンを借入することです。
やはりマンション買い替え時には個別に相談しにくい銀行の住宅ローンは利用するのが難しくなってしまいます。マンション買い替えの状況や、売却活動の進捗具体など、スケジュールも含めて相談できる銀行で相談するのが大切です。
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マンション買い替えに使える住宅ローン
マンション買い替え時に相談できるおすすめの住宅ローンをご紹介します。
マンション買い替え時のポイントとなる住宅ローンは「相談しやすい」ことに加えて、やはり金利が低く、審査にも比較的通りやすい住宅ローンと考えます。
以下に、是非、活用がおすすめの住宅ローンをご紹介します。
なお、住宅ローンは複数行を並行して相談した方が条件面や、審査でも有利になりやすくなりますので、2~3行程度を相談してみるのが良いでしょう。
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引っ越しに適した時期
マンション買い替えでは、引っ越しの時期やスケジュールにも注意が必要です。
マンションを買い替えする場合、売却するマンションから購入するマンションへ引っ越しできるようにスケジュールするのが理想です。そのためには、わずかな期間だけでも、それぞれのマンションの所有時期を被らせておく必要があります。
一方、先行してマンションの売却を進めて、先に引き渡しを完了させた場合には仮住まいなどへの引っ越しを挟む必要があります。
この時、引っ越しを2度行ったり、短期的に居住するための住宅を借りるための諸費用が発生してしまうため、費用が余計にかかってしまうことになります。
手間暇を減らし、出費を抑えるためには、仮住まいを利用せずに、上手にスケジュールを調整してマンション買い替えを行うことがポイントになります。
決済日の引き渡しに向けた準備
マンションを売却する場合、代金決済や引き渡しは手続きの最終段階にあたります。この決済日の手続きに不備があると、売主・買主だけでなく、全ての関係者の手続きやスケジュールにずれが発生してしまいますので、間違いが起きないように準備しておく必要があります。
通常は、譲渡代金の決済とマンション引き渡しは同日に設定されます。
そして、決済日には、買主・売主に加え、不動産業者や買主に住宅ローンを融資する銀行、売主が住宅ローンを借りている銀行(売却時に完済予定)、登記手続きを行う司法書士が一堂に会し、必要な残手続きを全て完了させます。
最初に、マンションの所有権を移転させ、登記するために必要な書類が全て揃っているかを司法書士が確認し、問題なければ買主に住宅ローンが融資されます。
その住宅ローンや自己資金から、売主に譲渡代金が支払われ、代わりに所有権移転のための書類が渡されます。また、この譲渡代金から、借入中の住宅ローンが返済され、銀行から抵当権を解除するための書類が引き渡されます。
こういった書類確認や、住宅ローン融資の実行、さらに借入中の住宅ローンの返済手続きなどを順番に行っていくため、予想外に時間もかかってしまうこともあります。
書類準備や印鑑の持参などを漏れなく行うことに加え、余裕を持った時間を空けておく方が良いでしょう。
不動産業者を上手に活用する
ここまでマンションの売却のための準備などを解説してきました。
しかし、マンション売却のための準備や、売買契約書の確認など、慣れていない方には難しい部分もあります。さらに、売却を進めていくなかで予想外の問題や疑問が発生することもあるでしょう。
そんな時には媒介契約を行っている不動産業者をうまく活用しましょう。
今回、無料で売却査定を行える「ノムコム」などもご紹介しましたが、ノムコム(野村不動産)などの大手不動産会社は真摯に相談に乗ってくれますし、数多くの不動産取引経験を有しています。
こういった不動産業者に早めに相談して、疑問や不安を残さないようにマンション売却を進めていくことが大切です。
まとめ
マンションを売却する時の注意事項や準備の進め方、売買契約書を注意したい項目について解説しました。
マンションの売却は、一般的な方が個人的に経験する取引のなかでは最大規模になる可能性の高い重要なものです。誤りがあると、損をしてしまったり、後から後悔することにもなります。
事前に準備しておくことや、確認事項を知っておくことで、無事にマンション売却を進めやすくなりますので、是非、活用してみてください。
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