自己破産や任意整理をしても減額できない借金があります。
せっかく債務整理して借金が無くなると期待していたにもかかわらず、債務整理後に借金が残ってしまうことがあるのです。
借金と債務整理の関係を示す場合、次のように2つの側面から表現されます。
- 債務整理の対象になる借金と対象にならない借金
- 債務整理で減額できる借金とできない借金
「債務整理の対象になる借金であれば、当然減額できる借金だろう」と思う人が多いのですが実はそうではありません。
「債務整理の対象になる借金であっても、債務整理で減額できない借金」があります。
しかも、債務整理の手続きの種類によって、減額できない借金に違いがあるのです。
本記事では、「自己破産や任意整理で減額できない借金がある?」をテーマに、債務整理と借金の関係についてお話しします。
債務整理できる借金できない借金
「債務整理できる借金できない借金」は、借金の減額ができるかどうかに関係なく「債務整理の対象になる借金、対象にならない借金」と表現されるのが一般的です。
では、どのような借金が、債務整理の対象になるのか対象にならないのかを解説していきましょう。
債務整理の対象になる借金
債務整理できる借金、つまり債務整理の対象になる借金は、貸金業者などから融資をうけた借金だけではありません。
クレジットカード利用による物品購入・サービス提供・キャッシングの未払金、奨学金、スマホ本体の分割購入、個人間での借金など、「返済義務があるすべての負債(借金)」も債務整理で減額できる借金に含まれます。
その他、住宅や車を購入するために組んだローンも、債務整理の対象になる借金に他なりません。
なお、ギャンブルのための借金は、自己破産の手続きでは免責不許可事由として債務整理の対象と認められないことが多いようです。
しかし、「程度が軽微・大いに反省している・今後ギャンブルをする可能性が少ない」と裁判所が判断した場合は、ギャンブルのための借金であっても債務整理の対象に認められます。つまり、自己破産で借金の免責が認められる得る借金となります。
債務整理の対象にならない借金
債務整理の対象と認められない借金、つまり債務整理できない借金は次の2種類あります。
- 「公的な性質が高い借金」
- 「返済しないと相手(債権者)の生活が成り立たない借金」
「公的な性質が高い借金」とは、「租税債権」と呼ばれる国民健康保険・住民税・所得税などの税金、駐車違反や刑事罰による罰金などが該当します。
また、返済義務のある「奨学金」も、公的な性質が高い借金と理解しておくことが必要です。
こうした税金や罰金などは、債務整理の対象とは認められません。
そのため、お金の余裕がなくて税金を延滞していると自己破産しても無くならない借金となります。
次に「返済しないと、相手(債権者)の生活が成り立たない借金」とは、「返済しないことが道義的に問題である借金」とも言われます。
具体的には『破産法第253条』に定められている、「離婚後に子供に対して支払われるべき養育費や扶養に関する請求権」や「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」です。
このように借金には債務整理できるものとできないものがあることから、自分で勝手に判断するのではなく、弁護士などの専門家に確認することを忘れないでください。
債務整理で減額できない借金は?
債務整理は借金の減額(免除も含む)をするための手続きですが、どのような借金でも減額できる訳ではありません。
借金には債務整理の対象になるものと対象にならないものがあります。
これらの借金のうち債務整理の対象にならない借金は当然のことながら減額できませんが、債務整理の対象になる借金のどれもが減額できるということでもありません。
つまり、債務整理の対象になる借金であっても、減額できない借金というものがあるのです。
しかも、債務整理の種類によって、減額できる借金の種類にも違いがあります。
そこでここでは、債務整理の手続きごとの「債務整理の対象ではあるが減額できない借金」を一覧表にして紹介しましょう。
なお、自己破産においては、免責(返済の免除)を減額として取り扱っています。
減額できない借金 | |
任意整理 | ・債務者が債務整理の対象から除外した借金
・理論上は次のような借金の減額が可能だが、交渉に応じてくれる会社はまず存在しない。 返済回数の少ない借金 ブラックリスト登録者の借金 個人再生で圧縮した借金 一度任意整理した借金 ・住宅ローンおよび車ローンの元金は減額されない。ただし、整理対象からの除外は可能 |
個人再生 | ・次の4つの債権(借金)は減額できない。
一般優先債権:裁判所への納入金、税金、健康保険料、国民年金保険料、罰金など 共益債権:再生計画を実施するために必要な費用、電気、ガス、水道料金など 非免責債権:民事再生法229条に定めるもの 担保付債権:担保が設定されている借金は、他の債権者とは別に返済が必要 ・住宅資金特別条項を利用する場合も利用しない場合も、住宅ローンの元本は減額できない。 |
自己破産 | ・不動産、車、保険、株式などすべての財産は管財人によって現金に換えられ、
債権者への配当に充てられる。そのことで借金を免責(返済の免除)される。 |
注意したい住宅ローンと車ローン
債務整理をする際には特に気を付けたい借金があり、その代表的なものが「返済中の住宅ローンと車ローン」です。
これらは債務整理対象の借金ですが特別な扱いをされ、しかも債務整理の種類によって、借金の減額に関しても異なる取り扱いがされます。
以下、「返済中の住宅ローンと車ローン」の原則的な取扱いルールについて債務整理ごとに紹介しておきます。
①住宅ローン・表1
住宅ローンの取扱い原則 | |
任意
整理 |
・任意整理は整理する借金を選択できるので、住宅ローンを対象から除外できる。
この場合、他の借金が減額されても月々の返済は厳しい可能性がある。 ・整理する場合は、債権者(ローンの借入先)と交渉しなければならない。 この場合、返済期間などの変更できても、住宅ローン残額の減額はできない。 |
個人
再生 |
・住宅資金特別条項を利用すれば、住宅を手放さずに住宅ローン以外の借金だけを整理できる。
この場合、支払期間延長やリスケジューリングを債権者の同意なしで可能 ・住宅ローンを整理の対象にすると、住宅を裁判所に差し押えられる。 この場合、住宅を失うが、原則として住宅ローン残額は他の借金と同様に大幅に減額できる。 |
自己
破産 |
・住宅ローンの返済が免除される代償として、住宅を手放す必要がある。 |
②車ローン・表2
車ローンの取扱い原則 | |
任意整理 | ・返済中の車ローンを整理の対象からはずし、車を手元に残すことができる。
・返済中の車ローンを整理の対象にすると、車検証に記載の所有者が車を回収して売却し 残金の全部または一部に充てる。 ・ローンが完済されている車は、そのまま使用可能 |
個人再生 | ・車ローンを返済中の場合、車は車検証に記載されている所有者に引きあげられてしまう。
・車ローンを完済している場合、問題なくそのまま使用可能 ただし、車ローンを完済していても車の査定額が高く価値があると認められる場合には、 裁判所により没収されて換価されることがある。 |
自己破産 | ・原則としてローンが残っている場合は、車を手元に残せない。
・ローンを完済していて時価20万円以下の価値しかない車であれば、そのまま所有が可能 |
債務整理すると個人信用情報機関のブラックリストに載ることから、5~10年近くは、新規で住宅ローンや車ローンを組めなくなります。
債務整理をする際は、デメリットも良く理解したうえで、どの手続きを選択するかを弁護士や司法書士に事前相談した上で決定したいものです。
債務整理におすすめの専門家
任意整理や自己破産などの債務整理を行うには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが大切です。
また、これらの専門家は事前に相談する段階なら無料で相談にものってくれますので、まずは相談されてみるのが良いでしょう。
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まとめ
- 債務整理できる借金できない借金
- 債務整理の対象になる借金であっても、債務整理で減額できない借金がある
- 債務整理の対象になる借金:クレカ利用代金・奨学金・個人間借金など「返済義務がある」すべての負債
- 住宅や車を購入するために組んだローンも、債務整理の対象になる借金
- 債務整理の対象にならない借金は、次の2種類
- 「公的な性質が高い借金」:国民健康保険や住民税や所得税などの税金、駐車違反や刑事罰による罰金など
- 「返済しないと、相手(債権者)の生活が成り立たない借金」:破産法第253条に定める養育費や扶養に関する請求権など
- 債務整理で減額できない借金は?
- 債務整理で減額できない借金は、債務整理の手続きの種類によって異なる(詳細は一覧表参照)
- 注意したい住宅ローンと車ローン
- 「住宅ローンと車ローン」は、債務整理の種類によって特別な扱いをされる(詳細は表1・表2参照)