金融機関からの融資を受ける際に企業の信用力が低いと担保を求められる事があります。
このときの担保として土地や建物のような不動産を思い浮かべがちですが、実は売掛債権も担保にすることが可能です。
そして、この売掛債権を担保にした融資のことを売掛債権担保融資と呼びます。
本記事では売掛債権担保融資についてどのような融資なのか、ノンバンクから売掛債権担保融資を受ける際の注意点について説明します。
売掛債権担保融資とは?
冒頭で説明した通り、売掛債権担保融資とは売掛債権を担保にした融資とのことです。
融資ということで、お金を借りる点では通常の銀行融資やビジネスローンと同様ですが、違うのは売掛金を担保にしていることです。
業歴の浅い企業や、自営業者、さらに小規模事業者の場合、金融機関からの融資に対して担保を提供したくても、不動産などを持っていないことが多くなります。
そのため、不動産担保融資などは利用できない可能性が高いでしょう。
しかし、売掛債権であれば、商取引で発生するものですので、保有している企業、自営業者は多いでしょう。
売掛債権担保融資としては、銀行がサービスをしている場合もありますが、ノンバンクがサービスを提供している場合もあります。
売掛金を担保にする
売掛金を担保にするということは、融資の審査においても保有している売掛金の内容が大きな影響を与えます。
審査において、売掛金の額面が全て担保として評価されるわけではありません。
通常、銀行や、ノンバンクの審査では、担保を評価して、さらに評価額に対して一定の担保掛目を乗じた額を「保全額」として扱っています。
担保掛目は、不動産担保なら70~90%、株式などの有価証券で80~90%といったところです。しかし、売掛金は、取引先などの違いによって大きく評価や、掛目が異なってきます。
例えば大企業や自治体などの信頼性が高い相手に対する売掛金は評価額が高くなりますし、零細企業に対する売掛金は評価額が低くなります。
だいたい中堅・大企業に対する売掛金で8~9割、中小・零細企業になると売掛債権の評価額はそれ以下になります。
また、債権の金額やどのくらい継続的に発生している債権なのかなどによっても担保としての評価額は異なります。
ちなみに売掛先と利用者の間の商取引において、売掛債権譲渡禁止特約を結んでいる場合は、その禁止特約を解除しないと担保に差し入れることはできませんので注意が必要です。
売掛先への通知は必要?
売掛金を担保にする際に気になるのは、売掛先である取引先に、債権を担保に差し入れた事が通知されるかということです。
もちろん、売掛先に通知をして売掛金を担保に差し入れたことを明確にしても良いのですが、売掛債権担保融資の利用者と売掛先との今後の関係性を考慮するならば望ましくはありません。
取引先によっては、担保に提供されたことで、資金調達者の信用に不安を感じ、取引を縮小させることを検討するかもしれません。
この点、売掛債権担保融資では、担保提供を通知することなく利用することも可能です。
ノンバンクに対して、売掛債権を担保提供する方法として、債権譲渡登記を行い、売掛金を担保として差し入れたことを明確にする方法でも売掛債権担保融資は利用することが可能です。
売掛債権担保融資保証制度とは?
ちなみに、銀行などから融資を受ける場合、信用保証協会によって融資に対する信用保証を受けることができますが、売掛債権担保融資に信用保証協会の信用保証をつけることもできます。
これを売掛債権担保融資保証制度と呼びます。
信用保証協会を活用することで、中小企業などの小規模事業者が資金調達できる可能性は高くなります。
売掛債権担保融資保証制度の利用対象者は中小企業で、設定可能な借入限度額は1億1100万円までです。
<保証協会を活用して資金調達する方法>
信用保証協会はノンバンクからの借入には利用できませんので、こちらを利用する場合には、銀行を窓口として相談して頂くことになります。
ファクタリングとの違い
売掛債権担保融資と同じように売掛金を利用した資金調達方法としてファクタリングがありますが、売掛債権担保融資とファクタリングはどのように違うのでしょうか。
ファクタリングも、ノンバンクから資金調達する方法として、近年、注目度の高い資金調達方法です。
売掛債権担保融資との比較対象として、ファクタリングもご紹介しておきましょう。
担保と譲渡の違い
売掛金債権担保融資と、ファクタリングでは、そもそも売掛金の取り扱い方が違います。
売掛債権担保融資では売掛金を担保にするのに対して、ファクタリングでは売掛金を譲渡します。
売掛金を担保にすると、融資をきちんと返済している限りは、融資をしてくれる銀行やノンバンクが、勝手に売掛先に売掛金を取り立てることはありませんが、利用者から返済を受けることができなくなると、直接売掛先から売掛金を回収して利用者の返済に充当します。
一方、ファクタリングの場合は、売掛金を譲渡するので売掛金の所有権はファクタリング会社に移行します。
所有権がファクタリング会社にあるので取り立てをするのは基本的にファクタリング会社となります。
しかし、ファクタリングには、2社間ファクタリングと、3社間ファクタリングの2種類があり、2社間ファクタリングの場合は、ファクタリング利用者が取り立てを行います。
この場合、別途、ファクタリング利用者とファクタリング会社の間で債権回収業務委託契約をして、利用者はファクタリング会社からの業務委託という形で売掛金を回収します。(売掛先にファクタリングの利用を知らせずに行います)
売掛先が倒産した場合
また、ファクタリングと、売掛債権担保融資では、売掛先が倒産したりして、売掛債権の回収ができなくなった場合の対応も異なります。
売掛債権担保融資で売掛先が倒産して、担保評価額が貸付額を下回ってしまえば、追加で売掛金を担保として差し入れることが求められますし、回収できなくなった売掛金の回収は資金調達者が自社でなんとかしなければなりません。
一方、ファクタリングの場合、売却後の売掛金の回収リスクはファクタリング会社が負います。
そのため、売掛先から債権を回収できなくなっても受け取ったお金を返済しなければならないということはありませんし、回収できなかった売掛金の回収はファクタリング会社がなんとかしなければなりません。
つまり、ファクタリングでは、売掛金の回収義務や、回収リスクはファクタリング会社が負うことになります。
法律の制限
法律の制限も異なります、売掛債権担保融資は「融資」の一種なので利息制限法などの適用を受けますし、融資をする事業者は銀行業の免許もしくはノンバンクならば貸金業の免許を取得している必要があります。
一方でファクタリングについては融資のように規制する法律がないので、利息の制限はありませんし、ファクタリング事業をするのに免許も必要ありません。
<ファクタリング会社には免許が必要?>
ノンバンクの債権担保融資に要注意
以上のような違いが売掛債権担保融資とファクタリングにはあります。
まとめると売掛債権担保融資は法律によって、金利に制限が掛けられており、貸金業免許も持ったノンバンクがサービスを行っているので、最低限の会社のフィルタリングができた上で融資を受けることができます。
しかし、売掛金が回収できなかったリスクは自社で引き受ける必要があります。
一方でファクタリングでは売掛金を回収できなかった場合のリスクはファクタリング会社が引き受けてくれますが、法的な制限がありませんので売掛債権担保融資よりも金利は高くなりがちですし、どのような事業者でもサービスができます。
そのため、ファクタリング会社のなかには、悪質なファクタリング会社が紛れ込んでいることもあります。
<関連:悪質ファクタリング会社を見抜く方法>
>>悪質ファクタリング会社を見抜いて騙されずに安全にファクタリングを利用する方法
このような理由から、売掛債権担保融資とファクタリングの間にはグレーゾーンが存在します。
ファクタリングのように高い金利を取りながら、売掛債権担保融資のように利用者が債権回収のリスクを背負わなければならない契約をする事業者が存在するのです。
このような事業者は2000年代に闇金に対する規制が厳しくなったことから、闇金からファクタリング会社に鞍替えしたと言われており、実際に既に摘発された事業者も存在します。
このような理由からノンバンクから売掛債権担保融資を受ける際には注意を払うべきです。
債権担保融資のチェックポイント
上記で説明したようにノンバンクの売掛債権担保融資を利用するときには危ない貸金業者や、悪質ファクタリング業者に引っかからないためにも、経営者や経理担当者は自衛策を講じる必要があります。
以下では、ノンバンクの売掛債権担保融資を利用する際に、気を付けておきたいポイントを解説します。
貸金業の免許を確認する
このような悪質ノンバンクやファクタリング会社に引っかからないために、まず挙げられる方法が貸金業免許を確認することです。
貸金業免許は以下のサイトから確認できるので免許を持っていない事業者から融資を受けることは避けるべきです。(もちろん、ファクタリングには免許が必要ないので、この方法では危ない業者を見分けられません)
事前に事業者についてチェックする
危ない業者は危ない業者として少し調べれば判断できます。問い合わせ先の電話番号が携帯電話であったり、ホームページに記載されている住所が疑わしかったり、ネット上で悪い噂があったりと少し確認すれば、危ない業者については危ない雰囲気を感じることができます。
資金調達を検討するうえで、対象となるノンバンク候補が見つかった場合は、事前に口コミ情報などから調査するのが良いでしょう。
契約書の内容を確認する
また契約書についてきちんと確認することも必要です。ファクタリングなのに債権の償還請求権付契約であったり、売掛債権担保融資なのに利息制限法の制限を超えて高い金利を設定したりしているノンバンクは危険です。
また、そもそも契約書を見せてくれない、交付してくれない事業者は更に危険です。
おすすめのファクタリング会社
当然ですが、悪質なファクタリング会社に騙されないためには、安心して利用できる信用力の高いファクタリング会社を選ぶことが大切です。
ここでは、ファクタリング業界のなかでも代表的な、安心して利用できるファクタリング会社をご紹介します。
ファクタリング会社へのご相談は、3~4社程度に並行して相談するのがおすすめです。
ビートレーディング
ファクタリング業界のなかで、最も知名度が高く、ファクタリング実績の豊富な会社がビートレーディングです。
ファクタリング業界のなかで最も利用されている実績が多いファクタリング会社だと言われています。
さらに、ビートレーディングでは、個人事業主や、小口利用者にも対応してくれるのが特徴です。
そのため、ビートレーディングは大手から中小規模・個人事業主の資金調達にも役立ってくれます。
そのため、中小企業の資金調達はもちろん、自営業者がファクタリングを利用したい場合にも、ビートレーディングはおすすめです。
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日本中小企業金融サポート機構
珍しいタイプのファクタリング会社として、日本中小企業金融サポート機構があります。
こちらの特徴は、郵送によるファクタリングに対応してくれることです。
一般的なファクタリングでは、即日対応可能と言っても、数時間程度の時間と、交通費などの諸費用がかかってしまいます。
一方、日本中小企業金融サポート機構は、最短30分での審査対応と、諸費用の削減に取り組みしています。
さらに、日本中小企業金融サポート機構は「一般社団法人」という特徴もあります。
営利追及型の株式会社などと違い、一般社団法人が実施しているファクタリングであるため、悪質ファクタリング会社に心配せずに利用することができます。
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まとめ
ノンバンクの売掛債権担保融資やファクタリングを受ける場合、危ない事業者にひっかからないために注意が必要です。
注意のポイントは3つですが、きちんとしたノンバンクと付き合うのならば売掛債権担保融資は企業にとって非常に有効な資金調達手法です。
ファクタリングはどうしても資金調達コストが高くなりがちなので、売掛金の回収が確実に行える自信がある場合は、ファクタリングよりも売掛債権担保融資で資金調達する方がベターです。
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