近年、就業して会社で働くとしても正社員があたりまえではなく、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなど様々な雇用形態が利用されています。
一般的に、正社員以外の方を「非正規社員」と呼ぶこともありますが、非正規社員は住宅ローンを借入しにくいと言われることもあります。
しかし、契約社員も準備や対応次第で住宅ローンを借入できます。
今回は主に契約社員を対象として住宅ローンを借入するための失敗しない方法を解説します。
契約社員とは?
最初に「契約社員」の定義から確認しておきましょう。
ご自身が正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど、どの区分に属するか良く理解できていないという方にもしっかりと確認しておいて頂きたい項目となります。
一般的に正社員と呼ばれる方の会社との契約は、「期間の定めがない契約」となっています。
期間の定めがないというのは、問題がなければ定年年齢まで働き続けることが出来る反面、必要がなくなればすぐにでも退職させられる可能性のある契約となります(但し、実際には理由の無い解雇は難しいので、正社員の雇用は法的にも守られています)。
一方、契約社員というのは、契約期間が決められた従業員のことを指します。
通常、1年などの期間を定めて雇用されるため、延長させず、期間終了で雇止めになることもあります。
契約期間を延長させないこと自体には問題がないため、正社員のように雇用が守られているとは言えません。
また、契約社員の契約期間も最長で2年11ヶ月までと法律で決められています。
そのため、一度の契約で3年以上の契約をすることができません。
そのため、将来的な返済能力を重視する金融機関からすれば、不安があると受け止められることもあります。但し、契約社員にはメリットもあります。
契約社員は期間が限定されている分、正社員に比べて給料が高く設定されていることもあります。
また、通常、正社員として採用されることが難しい企業でも契約社員なら採用されやすいということもあります。
そのうえ、契約社員として勤務して認められれば、その後正社員として契約を変えてもらえることもあります。
住宅ローン審査への影響
住宅ローンに申込した場合の審査では、やはり正社員に比べて契約社員は不利になる可能性があります。
特に、正社員に比べて、契約期間が限定されており、1~3年程度で契約を打ち切られてしまう可能性もあるという点がマイナスの影響になります。
しかし、契約社員が住宅ローン審査にプラスの影響を与えることもあります。
ここでは、契約社員が好材料になる点から解説していきます。
契約社員は給料が高い?
もちろん個人差はありますが、契約社員は通常、正社員に比べて給料が高く設定されているケースが多いようです。
正社員のように長期的な雇用や、昇給といった側面が少なく、雇用条件が悪くなる半面、雇用期間中の給料は高めに設定することが多いようです。
もちろん、住宅ローン審査にとっては、年収は高ければ高いほど有利に働く可能性が高くなりますので、給料水準が高くなることはプラスの材料となります。
契約期間は守られる
契約社員の場合、当初決められた契約期間の雇用は守られます。
会社都合によって契約期間終了前に契約を打ち切るということは原則できません。
正社員のような無期限雇用というのは、原則、いつでも雇用を中断することも可能な契約ですが、契約社員の場合は契約期間中の解除ができないことが特徴です。
以上のように、契約社員には給料水準が高めであり、契約期間中の雇用が守られているという特徴があります。
そのため、短期間の借入であれば、正社員よりも審査に有利に働くこともあります。
契約社員のデメリット
次に銀行の住宅ローン審査などで契約社員が不利になってしまう原因を考えてみましょう。
長期間のローンに適さない
契約社員の審査へのマイナス影響は「雇用期間」にあると言えます。
契約社員は通常、1年ごとの契約更新であるなど、原則、3年未満で雇用されることが多い雇用形態です。
そのため、安定収入を求める銀行の長期ローン(住宅ローンなど)に対しては不利となってしまいます。
雇用する企業としても契約社員やパート・アルバイトは雇用調整として使用することも多く、契約期間満了によって雇用が終了するケースも少なくありません。
一方、能力の高い、役立つ契約社員は雇用が延長されたり、そのまま正社員として採用されることもあります。
そのため、契約社員であっても、1年、2年といった短期間で働き先を変えるのではなく、1つの会社で長く働けている方は、銀行の審査でもプラスの判断をされることがあります。
住宅ローン審査で銀行が見るポイント
それでは、契約社員が銀行の住宅ローンに申込した場合、銀行は審査でどのような点を見ているのでしょうか。
ここでは、契約社員に対する住宅ローン審査のポイントや着眼点について解説していきます。
勤続年数を確認
住宅ローン審査では現在の職場における勤続年数が重要視されます。
勤続年数は長ければ長い方が審査に有利となりますが最低水準に対する基準は銀行ごとに異なります。
最低でも2年以上必要とする銀行もありますし、6ヶ月以上の勤続年数があれば申込可能とする銀行もあります。
但し、勤続年数1年未満で申込可能な住宅ローンは少ないため、銀行は良く選んで申込する必要があります。
勤続6ヶ月以上で申込可能は住宅ローン
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職歴を確認
契約社員の場合、間違いなく確認されるのは職歴です。
現在の職場での契約期間に加え、前職、前々職など、過去の職歴が確認されます。
この時、1年間で職場を転々としている方は審査で不利になります。
こういった方は、銀行の審査からは契約を延長してもらえなかった方であり、今後も契約期間だけで契約を終了させられてしまう可能性が高いと判断してしまいます。
一方、現在、及び過去の職場において、3~4年と長めに働いている方は、能力が高く、職場で必要とされるタイプの人だと判断してもらえます。
こういった方は契約社員と言っても1つの会社で長めに働けたり、正社員として採用してもらえる可能性のある方と考えられます。
個人信用情報の履歴
次に、銀行の住宅ローン審査で重要なのは個人信用情報です。
個人信用情報が重要視されるのは、契約社員や正社員などの雇用形態に限定せず、全ての方にとって同様です。
個人信用情報とは信用調査機関と呼ばれる会社が提供するサービスで、各個人の借入状況に関する情報が確認できるものです。
例えば、借入件数、借入残高、借入時期、延滞の有無、債務整理の有無などです。
これらは、適切な審査を目的に、信用調査機関を介して、各金融機関が情報共有を図っているのです。
個人信用情報の結果、既存借入の件数が多い方、及び事故情報(異動情報とも言います)のある方は審査通過が難しくなります。
例えば、カードローンやクレジットカードのキャッシング利用が3件以上ある契約社員の方は、住宅ローン審査に通るのはかなり難しいと言えるでしょう。
また、事故情報(過去に借入を延滞した履歴や、自己破産などを行った履歴)がある方は、審査に通るのがほぼ不可能となります。
年収水準を確認
一概には言えませんが、住宅ローンも借入ですので、年収が高ければ高い方が審査には有利となります。
年収が高いということは、それだけ住宅ローンに対する返済能力の高さを示すだけでなく、その人個人の能力の高さを示しますので、転職したとしても相応の収入を維持するであろうと推測できます。
また、銀行によっては、住宅ローンに申込できる方の年収水準に最低基準を設けている銀行もあります。
例えば、申込できる方の条件として、「年収300万円以上の方」と明記している銀行もあります。
年収が400万円以上となる方は、大部分の銀行で問題ありませんが、400万円未満となる方は、相談する銀行が年収条件を設けていないかを確認しておく必要があります。
年収条件のない銀行例
住宅ローン審査に通る4つのポイント
結論を言えば、契約社員の方も住宅ローンを組むことは可能です。
銀行によっては、パート・アルバイト、派遣社員の方の申込を不可としている銀行もありますが、契約社員までを制限している銀行はほとんどありません。
しかし、契約期間や勤続年数などの状況から、契約社員は住宅ローン審査に不利となり、審査落ちしやすくなってしまうのも事実です。
ここでは、契約社員の方が住宅ローン審査に通りやすくするための4つのポイントを解説しておきます。
自己資金を用意する
銀行の住宅ローン審査に通りやすくするために自己資金は大切です。
現在は自己資金がほとんどない方の住宅ローン借入(フルローンと呼びます)も可能ですが、その分銀行の審査基準は厳しくなります。
銀行は審査において、融資した住宅ローンを間違いなく返してもらえるか、もしくは、返済が止まった時でも、担保となる住宅を売却して間違いなく回収できるかを判定しています。
そのため、自己資金が多いことは銀行の審査にとって有利な材料となります。
同時に、自己資金が多いということは、申込人に貯蓄できるだけの余力や、計画性があることを示す好材料ともなります。
契約社員の方が審査に通りやすくするための目標としては、購入する住宅の1割以上は自己資金を用意しておきたいところです。
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既存借入を完済する
既存借入が多い方は住宅ローン審査に不利となります。
特に、カードローンやキャッシングで3件以上の利用がある方は審査に通るのも難しくなってしまいます。
契約社員として働いている方は、無事に住宅ローン審査に通るためには、出来れば既存借入は完済し、借入が無い状態で審査に臨みたいところです。
なお、この時、カードローンなどの極度額タイプの借入は完済だけでなく、解約まで行っておく必要があります。
カードローンは何度でも反復して借入できる商品ですので、解約だけでは借入が無いと判断してもらえません。
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カードローンやキャッシング枠などの既存借入があっても住宅ローン審査に通る?
無理のない返済計画を立てる
契約社員として働く方の場合、有能な方であっても、短期的に契約期間が切れて、無職となる期間が発生することもあるでしょう。
そのため、収入からギリギリで払える金額で住宅ローンを申込するのは危険ですし、審査でも通りにくくなってしまいます。
そのため、ご自身の収入から無理なく返済できる水準で住宅ローンの返済計画を立てる必要があります。
無理がない、余裕があると認められやすい水準としては、返済負担率が25%~30%未満となるのが目安です。
返済負担率とは、年収に占める年間の返済総額の割合のことです。
例えば、年収300万円の方が、年間で借入に対する返済を90万円行うとすれば、返済負担率は30%(=90万円÷300万円)となります。
収入合算を利用する
住宅ローンを申込しようとしている方が既に結婚されていたり、新たに購入しようとする住宅で両親などの親族と同居することを考えている場合、「収入合算制度」を利用するのも良いでしょう。
収入合算というのは、借入申込する方の単独の収入などで住宅ローン審査に通らない場合、同居する親族の収入を含めて、住宅ローン審査を行ってもらう方法です。夫婦2名の収入合算で住宅ローンを申込するのであれば、単純に考えて年収は2倍となりますので、その分住宅ローン審査にも通りやすくなります。
もし、収入のある親族と購入する住宅で同居されるのであれば、収入合算も検討してみましょう。
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正社員と嘘をつくのは厳禁
ここまで、住宅ローンを申込するにあたって、契約社員の方のメリット・デメリットに加え、審査に通るためのポイントを解説してきました。
総じていえば、やはり正社員に比べて、契約社員の住宅ローン審査は厳しくなりがちです。
審査に通って、住宅ローンを組むことは可能ですが、審査で不利となることは否めません。
そのため、契約社員の方のなかには、住宅ローンを申込する際に、雇用形態を正社員として偽って申込する方がいます。
大部分の銀行の住宅ローン申込書には、「雇用形態」を記載する欄がありますので、ここに「契約社員」ではなく、「正社員」として記入するわけです。
確かに、銀行の住宅ローン審査において、「正社員」であるか、「契約社員」であるかを見分けることは難しく、自己申告によって雇用形態を知らせる以外、銀行に雇用形態がばれることはほぼありません。
通常、住宅ローン申込で必要となる書類は、「源泉徴収票」や「健康保険証(写)」などであり、こういった書類には雇用形態まで記載されることはありません。
そのため、健康保険に加入して、勤務先名が記載された健康保険証がある契約社員であれば、住宅ローン審査で求められる書類を正社員として偽って提出することができます。
また、銀行から雇用契約書などの書類まで提出を求められることもほぼありません。
そのため、契約社員の方が、正社員であると偽って住宅ローン申込することも可能であり、銀行にばれる可能性はかなり低いと言えます。
しかし、こういった「嘘」をついての住宅ローン申込は非常にリスクが高いため、絶対に行ってはいけません。
ばれる可能性が低いと言っても、全くないとは言い切れません。
審査ではばれなくても、後日、正社員と偽っていたことを忘れて、契約社員であることを知らせてしまう可能性もあります。
住宅ローンなどの借入申込で「嘘」をついて借入することは、詐欺などの罪で訴えられてしまう危険性もありますし、ばれた時点で残っている住宅ローンの残高を一括返済するように求められてしまうこともあります。
ばれる危険性は低くても、ばれてしまった時の危険が大きいため、絶対に嘘の申告をすることはやめましょう。
契約社員に適した住宅ローン
契約社員の方が住宅ローンを申込する場合、申込する住宅ローンも良く選ぶ必要があります。
契約社員の申込を不可とする銀行は少ないですが、実際には銀行毎で審査基準が異なっており、勤続年数や、年収条件などで、契約社員には利用が難しい銀行も存在します。
そのため、契約社員でも利用しやすい住宅ローンを選ぶ必要があります。
ここでは、契約社員が借入しやすい住宅ローンを厳選してご紹介します。
三菱UFJ銀行(ネット受付専用)
三菱UFJ銀行のネット受付専用住宅ローンは契約社員にもおすすめの住宅ローンです。
三菱UFJ銀行は勤続年数が1年以上あれば申込可能であり、契約社員の申込に対する制限もありません。
また、三菱UFJ銀行のネット受付専用住宅ローンの特徴は金利が低いことです。
通常の三菱UFJ銀行の住宅ローンでも11年連続、国内で取扱い額が1場合多い住宅ローン、つまり日本で一番人気のある住宅ローンなのですが、ネット受付専用住宅ローンはさらに金利が低いというお得さがあります。
2021年7月現在、3年固定金利で0.41%というのは、住宅ローン業界全体のなかでもトップクラスに低い金利水準と言えます。
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住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行の住宅ローンもおすすめです。
住信SBIネット銀行は変動金利の低さが特徴の住宅ローンです。
さらに、全疾病保障付団信に無料で加入できるという特典も付加されているのが特徴です。
そのため、万一の死亡だけでなく、病気やケガが原因で就業できなくなった場合の住宅ローン返済を保険がカバーしてくれます。
また、住信SBIネット銀行も契約社員の申込が可能であり、勤続年数は6ヶ月以上あれば申込が可能な住宅ローンです。
そのため、広範囲の方に比較的利用しやすい住宅ローンと言えます。
申込・相談はこちらから
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さらに、住信SBIネット銀行には、インターネット専用で申込できる住宅ローン商品(上記)以外にも、対面で相談できる住宅ローン(ミスター住宅ローンREAL)があります。
ミスター住宅ローンREALであれば、ネット銀行のデメリットともいわれることのある相談しにくさを解消して申込することができます。
対面相談用住宅ローンは、東京都内他地域に設置されているSBIマネープラザにて申込できます(金利/全疾病保障などの借入条件は同一で、インターネットで申込するのか、対面で申込するのかの違いになります)。
なお、SBIマネープラザは店舗数が少ないため、以下からの事前予約が必須です。相談を希望する際にはご注意ください。
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★SBIマネープラザの住宅ローンサービス
★完全予約制ですのでまずはご予約ください
★ネット銀行の低金利を対面相談で利用可能
住信SBIネット銀行と同水準の低金利
全疾病保障特約を無料で利用できる
借入可能額(最大) | 2億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利 0.41%、10年固定金利 0.53% (2021年7月時点) |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 団信・全疾病保障付(金利上乗せなし) |
住信SBIネット銀行(フラット35)
借入期間、全期間固定金利の住宅ローンを希望するならフラット35が良いでしょう。
フラット35は最長35年間までの「借入期間全体を固定金利」にできるのが特徴です。
当初借入金利が、ずっと変わらず、借入期間全体に適用されるので、返済額を安定化できます。
そのため、住宅ローン借入時点で、将来の総支払額を確定できる「安心の住宅ローン」とも言えます。
ところで、フラット35のことを、「どこの銀行で借入しても条件が同じ」住宅ローンと誤解されている方がいます。
しかし、フラット35の金利条件はどこでも同じではありませんので注意が必要です。
フラット35の全期間固定金利の住宅ローンの特徴は同じですが、金利水準は銀行毎で個別に設定しています。
審査基準などは、どこの銀行でも一定ですが、借入条件は異なるのです。
同じフラット35を利用するなら、少しでも金利が低い銀行から借入したいと思うのは当然ですよね。
2021年7月時点でフラット35の金利が最も低いのは「住信SBIネット銀行フラット35」です。
フラット35は住宅ローンの借り換え目的でも借入できます。最近のフラット35は、「変動金利」にも負けないくらいの低水準で借入できますので、この機会に低水準の金利で全期間固定金利にしてしまうのも有効です。
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☆フラット35なら金利がお得な住信SBIネット銀行
☆長期固定金利で安心して借入できる
☆団信加入は任意で選択可能
☆審査規準が解りやすく利用しやすいのも特徴
借入可能額(最大) | 8,000万円 |
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適用金利・手数料など | 35年間固定金利 1.5%(2023年6月現在・保証型:自己資金10%以上) |
その他優遇など | 借入期間を通して固定金利 |
まとめ
契約社員は非正規雇用と呼ばれることもあり、正社員に比べて将来的な就業の安定性が低いと考えられがちです。
そのため、住宅ローンを申込しても、審査で不利な扱いを受けることがあります。
しかし、契約社員も住宅ローンを組むことは可能です。
パート、アルバイトや派遣社員と比べて、ずっと住宅ローンに通りやすいとも言えます。
但し、派遣社員の方が住宅ローンを借入するにあたっては、ポイントをおさえて的確に準備することが大切です。
準備が悪いと審査に通るのも難しくなってしまいます。
今回は契約社員が審査に通るための4つのポイントをご紹介しましたので、おすすめ銀行とともにご活用いただければ幸いです。
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