住宅購入を希望していて、良い物件が見つかったけど、自己資金となる貯蓄が出来ていないということもあるでしょう。
以前は住宅価格の10%を自己資金で用意するのが望ましいと言われましたが、現在は住宅ローンのフルローン活用も可能です。
しかし、「フルローンは危険」、「辞めた方が良い」と考えられている方もいます。
フルローンは本当に危険なのでしょうか?
今回は銀行の元住宅ローン担当者で、ファイナンシャルプランナーが、住宅ローンのフルローンを正しく活用するポイントを解説します。
住宅ローンのフルローンとは?
住宅ローンのフルローンとは、自己資金なしで住宅の購入金額を全て住宅ローンで賄うことを指します。
購入金額全額=フルという訳です。
また、フルローンのことを100%ローンなどと呼ぶこともあります。
頭金・自己資金なしの住宅購入
一般的に、住宅を購入する場合、必要金額のうち、いくらかを自己資金(頭金)で用意しておきます。
少し前までは住宅購入には頭金が1~2割程度は必要と言われ、頭金があることを前提として住宅ローンをどれだけ活用するのかが検討の対象になっていました。
この時、頭金がほとんど無く、住宅購入金額の全額を住宅ローンで充当することを「フルローン」と呼んでいます。
また、フルローンでは、住宅購入金額だけでなく、「諸費用」も含めて、必要な金額全てを住宅ローンで借入することもあります。
つまり、フルローンは、狭義の意味で「住宅購入金額の100%」、広義の意味では、「住宅購入金額+諸費用」を住宅ローンで借入することを意味します。
フルローンの注意点
インターネットサイトで調べたり、一般的なファイナンシャルプランーと呼ばれる方に相談するとフルローンは止めた方が良いと言われることもあります。
そういった場合には、良くフルローンは危険だからと言われます。
なぜ、住宅ローンのフルローンは危険なのでしょうか。
住宅ローンのフルローンが「危険」、「辞めた方が良い」と言われる時、理由の大部分は、「借入額が過大」と「金利負担」になっています。
この理由について、もう少し詳しく確認しておきましょう。
借入額が過大?
住宅ローンを借入する場合「借入できる金額」と「借入して良い適正額」は異なります。
住宅ローンを借入すれば、その後、数十年に渡って、毎月返済を続けていく必要があります。
大きな金額の住宅ローンを借入すれば、その分、毎月の返済額も大きくなりますので、1月ごとの返済にかかる負担も増加します。
そのため、住宅ローンを借入する際には、「本当に返済が可能か」という観点から考える必要があります。
但し、この問題は、「フルローン」に限定した問題ではありません。
住宅ローンを借入する時には、「必要な金額を借入できるか」だけでなく、その金額を借入したら、どれだけの金額をいつまで支払うのかを考える必要があるのは、全ての方に共通です。
例えば、フルローンを利用する方でも、5,000万円の住宅を購入するのか、3,000万円の住宅を購入するのかで、当然、その後の返済金額は大きく異なります。
自己資金があったとしても同様です。
フルローンで3,000万円借入するよりも、自己資金として500万円を用意している方が、5,000万円の住宅を購入する方が、借入額も大きく、返済額も増加します。
つまり、借入額が過大となるかどうかは住宅ローンをフルローンで活用するかどうかではなく、いくらの住宅を購入するのかが重要と言えます。
住宅ローンの借入可能額の計算方法
住宅ローンの借入可能額を知っておきましょう!!自分でできる計算方法
金利負担の問題
フルローンで住宅ローンを借入すると、自己資金として頭金を用意している場合に比べて、金利負担は重くなります。
同じ価格の住宅を購入する場合、自己資金が無い分、借入額が大きくなりますので当然のことです。
仮に、自己資金として500万円を用意している場合との比較で考えてみましょう。
この時、住宅ローンの借入金利が1%だとすると、年間の金利負担は5万円(500万円×1%)増加することになります。
月額で約4千円程です。
もちろん、金利負担は少ない方が良いですが、自己資金が無い時に、「フルローン」での住宅購入が危険、絶対だめという程の差ではないと考えられます。
むしろ、前述の通り、購入を考える住宅の金額が重要です。
金利に関しても自己資金があるかないかというよりも、「いくらの住宅を購入するのか」がポイントと考えれば良いでしょう。
以上の2点から言えば、フルローン=危険とは言えないことが解ったと思います。
むしろ、どういった住宅を購入するのかということの方が重要です。
借入する金額自体に無理がなければ、自己資金があっても無くても、大きな問題はありません。
フルローンが危険と言われる理由
前述の通り、住宅ローンをフルローンで借入すると自己資金がある方に比べて借入額は多くなる傾向があります。
そのため、住宅ローンは自己資金なしで借入するのは危険と言われるのですが、もっと大きな理由があります。
それは、住宅購入の意識が高まり始めたバブル前後のころは今よりもずっと金利が高かったことです。
現在、住宅ローン借入時の金利は低いものなら1.0%以下となるものが少なくありません。
一方、バブル前後のころは金利がずっと高く、酷いころは10%近くにもなっていました。
住宅ローンの金利が10%近いと、住宅ローンを35年間、元利均等返済で借入すると総返済額は借入額の3倍にもなります。
5%でも倍になります。つまり、住宅ローンを3,000万円借入すると、6,000万円から1億円もの返済が必要となったのです。
一方、借入金利が1.0%の場合、同じ35年間の元利均等返済でも、3,560万円程度の支払いになりますので支払総額が大きく異なることが解ると思います。
そのため、ある程度ご年配の方や、バブル前後に住宅を購入した方にとって、少しでも住宅ローンの借入額は減らすことは非常に重要であり、大きな金額を借入してしまうとその額の2倍、3倍もの支払いが必要になるという印象が強いのです。
高齢の方や、ご両親、年配の方にとって住宅ローンの頭金は重要であり、自己資金なしで住宅を購入するなんて考えられないことだったわけです。
しかしながら、近年、住宅ローンを借り入れする環境は大きく異なっています。
将来的に金利が上昇する懸念が無いとは言えませんが、急激に上昇する可能性は低いでしょう。
また、上昇の可能性が出たタイミングでフラット35に切り替えれば、借入期間全期間の金利を固定することも可能です。
頭金があるメリット
もちろん、自己資金として頭金を用意しておくメリットはあります。
住宅購入時に自己資金があることのもっとも大きなメリットは、購入できる住宅の範囲が広がることと、住宅ローン審査に通りやすくなることです。
前述の通り、住宅ローンには、借入して良い適正金額というものがあります。
借入可能額は、年収と年齢、家族構成で、ある程度きまります。
同条件の方なら、自己資金が多い方が、その分高額の住宅を購入できることになります。
必ずしも、高額の住宅を購入することが良い訳ではありませんが、購入金額の上限をあげることで、対象となる不動産の範囲は広くなります。
その分、良い物件を見つけやすくなるとも言えるでしょう。
フルローンでも審査に通る?
重要な問題として、フルローンでも銀行の住宅ローン審査に通過して、住宅ローンは借入できるのかという点を確認しておく必要があります。
結論から言えば、住宅ローンのフルローン借入は可能です。住宅ローンの審査では、「返済能力」と「担保保全」の観点から判定されます。
銀行が融資を行う際に重要となる基準に担保保全があります。
担保保全とは、購入する住宅の評価額に対し、住宅ローンの借入金額が100%以内に収まっているかどうかが審査されます。
つまり、不動産評価額≧住宅ローンであることが必要です。
通常、新築物件(マンション)の購入時は、購入金額=評価額とされることが多く、購入金額の全額を住宅ローンで借入することは可能です。
また、諸費用に関しては、全て住宅ローンに含めることは難しい場合が多くなりますが、諸費用のうち最も大きな割合を占める「銀行の保証料+事務手数料」は、フルローンで対応が可能です。
銀行の保証料+事務手数料は、住宅ローンの借入時に、一括支払いが原則です。
しかし、それ以外にも「保証料の内枠方式」と言って、借入時に支払わず、金利に上乗せして、毎月の約定弁済に上乗せして支払っていくことも可能です。
住宅ローンのフルローンが借入できるかどうかの最大のポイントは「返済能力」にあります。
フルローンかどうかより、結果的に借入する金額に対し、年収・年齢・家族構成などから判断される返済能力が十分かどうかという点が、銀行の審査のポイントになります。
つまり、フルローンであっても、返済能力が認められれば、審査に通過して借入できる可能性は十分にあります。
なお、住宅ローンに対する返済能力は、返済負担率という点から評価されますが、借入可否に関しては以下の関連記事をご参照下さい。
返済負担率
フルローンの金利は高い?
住宅ローンをフルローンで借入すると金利が高くなると心配されている方もいるでしょう。
実際、フルローンで借入すると金利が高くなる住宅ローンもあります。
一部の銀行では住宅購入価格の80%~90%以内が住宅ローンの借入額であれば、借入金利が低くなるという住宅ローン商品もあります。
フルローンだと金利が高くなる代表的な住宅ローンとしてはフラット35があげられます。
具体例として楽天銀行のフラット35を見てみましょう。
楽天銀行のフラット35の適用金利は借入金額が必要額の90%以内かどうかで金利が異なります。
楽天銀行のフラット35(借入期間21年以上・団信なし)は借入額が90%以内であれば1.07%となるのに対して、90%を超えると1.51%に上昇します(2021年7月借入時金利)。
つまり、フルローンなのか、90%以内なのかで金利は0.41%も異なってしまうのです。
但し、フラット35の適用条件は相談・申込する銀行ごとでも異なりますので、全てのフラット35が同様という訳ではありません。
また、フラット35だけでなく、通常の民間銀行が行っている住宅ローンでもフルローンだと金利が高くなってしまう住宅ローンがあります。
そのため、フルローンの利用を希望している方は、フルローンの利用が可能な住宅ローンを探すだけでなく、フルローンでも金利条件が変わらないものを選ぶ必要があります。
フルローンのメリット
フルローンを活用することには大きなメリットもあります。
通常、頭金を用意するには、一定期間「貯蓄」を積み重ねていく必要があります。
仮に、500万円の自己資金を用意するものとして、月に10万円の貯蓄を行うなら、自己資金が用意できるまでに4年以上の期間が必要になります。
その間は、住居に対する「賃料」も支払っていく必要がありますので、月額10万円の貯蓄自体が難しいという方も少なくないでしょう。
そうなれば、頭金が用意できるまでには、4年よりも、もっと長い期間が必要になることもあります。
現在のように、「超低金利」と呼ばれる時代では、同条件の住居でも、賃貸で住むより、購入して住宅ローンを返済した方が、毎月の支払額が大幅に低下することがあります。
例えば、住宅ローンで5,000万円を借入する場合を考えてみましょう(借入条件は、みずほ銀行の2018年12月時点の変動金利/優遇後0.625%、期間35年)。
5,000万円とは、東京都などの首都圏でも、十分にファミリー向け住宅を購入できる価格を想定しています。
この時、毎月の返済額は13.3万円であり、マンションの管理費・修繕費などを加算しても、およそ15万円前後の支払で良いと予想されます。
現在、東京都内の賃貸マンションにお住まいというファミリーの場合、15万円以上の家賃を支払いながら、住宅購入のための頭金を準備している方もたくさんいるでしょう。
こんな時、先に住宅を購入してしまうことで、毎月の住居費が減少できることになります。
住宅を買う前に貯蓄するのではなく、買ってから貯蓄した方が、効率良く貯蓄できることもあるのです。
さらに、住宅ローンを活用すると、「住宅ローン控除」が活用できます。
住宅ローン控除では、その時に支払った所得税の一部を還付してもらうことができ、最大で年間40万円×10年間の還付が可能です。
つまり、頭金が用意できるまで買わないではなく、住宅ローンの借入に問題がないなら、先に購入してしまった方が、貯蓄も行いやすくなり、大きなメリットが受けられることもあるのです。
金利の低さが魅力の銀行
★住信SBIネット銀行の住宅ローン
★業界トップクラスの低金利
★新規購入時の通期変動金利は0.32%(2023年5月現在)
★全疾病保障保険の特約を無料で利用できる
借入可能額(最大) | 1億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利0.32%(借り換え時 0.299%) ※所定の条件を満たした場合の通期変動金利となります※掲載金利は最大金利引下げ幅時の適用金利です。審査結果によっては、表示金利に年0.1%上乗せとなる場合があります。 |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 全疾病保障特約を無料で付加、一部繰上げ返済手数料無料 |
住宅選びがポイント
フルローンで住宅購入をする場合、「住宅選び」が最大のポイントとなります。
先程ご説明のように、住宅ローン審査では、住宅ローンの借入可能額は、原則、不動産評価額の範囲内に収まる必要があります。
新築マンションの場合、購入金額=不動産評価額となるケースが多いのですが、「戸建住宅」、「中古マンション」の場合には、購入金額>不動産評価額となってしまい、フルローンが活用できないケースがあります。
特に、以下の場合は注意が必要です。
- (中古マンション)近隣相場に比較して割高の住宅
- 建築費が高い戸建住宅
- 中古の戸建て住宅
特に、戸建て住宅では、銀行の不動産評価額が、購入金額より低くなってしまうケースが少なくありません。
戸建て住宅の場合、銀行の評価は、近隣の相場や、面積、構造、築年数などで行われます。
注文住宅などで、オプションなどに費用をかけているものの場合、購入金額が高くなってしまいますが、これらは、不動産評価額に反映されません。
そのため、不動産評価額に対し、購入金額が高く、乖離幅が大きくなる傾向にあります。
また、一般的に、銀行の不動産評価では、中古・戸建て住宅は、評価額が低くなりがちです。そのため、購入する住宅によっては、そもそもフルローンが活用できないということもあります。
おすすめの住宅ローン
住宅ローンはフルローンでも借入できるのは前述の通りです。
近年の住宅ローン金利の低さを考えれば、貯蓄を優先するより、早く購入してしまった方が良いこともあります。
しかし、銀行によっては審査が厳しく、フルローンに対応してくれないものも存在します。
ここでは、フルローンにおすすめしたい住宅ローンをご紹介します。
三菱UFJ銀行(ネット受付専用)
大手都市銀行の三菱UFJ銀行ですが、店頭申込とネット申込で住宅ローンの借入条件は異なります。
もちろん、インターネットから申込した方が、借入金利などの条件は良くなります。
特に、金利には大幅な差がありますので、ネット申込がおすすめです。
三菱UFJ銀行の住宅ローンも人気商品であり、毎年の利用実績では13年連続で日本1となる住宅ローンになっています。
☆三菱UFJ銀行のネット専用住宅ローン
☆13年連続で日本で最も利用されている住宅ローン
☆変動金利 0.475%(2022年1月現在)
☆3年固定金利 0.34%、10年固定金利0.74%(2021年4月現在)
☆申込手続きなどはネットで完結
☆7大疾病保障付き住宅ローン ビッグ&セブン<Plus>も利用できます
借入可能額(最大) | 1億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利 0.475%、3年固定金利 0.39%、10年固定金利0.74%(2022年1月現在) |
その他優遇など | 7大疾病保障付き住宅ローン ビッグ&セブン<Plus> |
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行はネット専業と呼ばれるタイプの銀行ですが、住宅ローン金利が低いことで人気の高い銀行です。
特に、変動金利は0.4%台(2021年7月現在)です。フルローンで重要な金利がここまで低いというのは大きなメリットになります。
さらに、住信SBIネット銀行は全疾病保障に無料で加入できます。
そのため、住宅ローン借入後の病気やケガによる就業不能に備えることができます。
▼以下から事前相談・条件確認が可能です。
★住信SBIネット銀行の住宅ローン
★業界トップクラスの低金利
★新規購入時の通期変動金利は0.32%(2023年5月現在)
★全疾病保障保険の特約を無料で利用できる
借入可能額(最大) | 1億円 |
---|---|
適用金利・手数料など | 変動金利0.32%(借り換え時 0.299%) ※所定の条件を満たした場合の通期変動金利となります※掲載金利は最大金利引下げ幅時の適用金利です。審査結果によっては、表示金利に年0.1%上乗せとなる場合があります。 |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 全疾病保障特約を無料で付加、一部繰上げ返済手数料無料 |
なお、ネット銀行ではなく、対面相談ができる住宅ローンが良いという方には、住信SBIネット銀行の「MR住宅ローンREAL」がおすすめです。
MR住宅ローンREALとは、通常のネット専用ローンと同条件で、実際の店舗で相談・借入申込ができる住宅ローンです。
但し、住信SBIネット銀行の対面相談可能な店舗数は少なく、事前予約が必須となります(以下のリンクからの予約となります)。
★SBIマネープラザの住宅ローンサービス
★完全予約制ですのでまずはご予約ください
★ネット銀行の低金利を対面相談で利用可能
住信SBIネット銀行と同水準の低金利
全疾病保障特約を無料で利用できる
借入可能額(最大) | 2億円 |
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適用金利・手数料など | 変動金利 0.41%、10年固定金利 0.53% (2021年7月時点) |
所要時間 | 申込から融資実行まで1ヶ月程度 |
その他優遇など | 団信・全疾病保障付(金利上乗せなし) |
まとめ
住宅ローンを借入する時、頭金を用意せず、購入金額の全額を住宅ローンで借入することを「フルローン」と呼びます。
フルローンは危険、辞めた方が良いと言われることもありますが、返済能力に問題がなければ、「フルローン」自体に特段の問題はありません。
住宅購入時の「頭金」は、購入できる住宅の選択肢を増やしたり、住宅ローン審査に通りやすくなるメリットはありますが、将来の返済負担に関する影響は軽微と考えられます。
フルローンでの住宅購入を考える場合、住宅選びが重要になります。
中古マンションや、戸建て住宅の場合、フルローンが難しいケースもありますので、事前に銀行などと相談されておくのが良いでしょう。
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