会社の資金調達方法として最もメジャーな方法が銀行から融資を受けることです。
しかし、一口に銀行融資と言っても、その事業規模や会社の経営状態によって受けられる融資はさまざまです。
「銀行融資」を分解して、銀行融資にどのような種類があるのか、銀行融資毎の特徴や、どのような事業者に向いているのかなど、中小企業経営者や個人事業主が知っておきたい特徴や利用方法などをご紹介します。
金融機関別の融資の種類
まずは、銀行融資の「種類」を考える場合、いくつかの切り口で分けることができます。
事業を始めて、資金調達を考え始めた頃に、銀行や、信用金庫・信用組合、政府系金融機関など、ご自身がどこに相談すれば良いのかで悩まれる経営者は多いと思われます。どの金融機関に相談すれば良いのかは、金融機関毎の特徴や、違いを知ることで解消可能です。
最初に、融資を行ってくれる金融機関別の種類や規模による違いから説明しましょう。
今回は銀行融資ということで、いわゆるノンバンクのビジネスローンについて説明していませんが、「融資」という意味で考えればノンバンクからのビジネスローンも候補に挙がってくるでしょう。
メガバンク(都市銀行)
最初に紹介するのがメガバンクと呼ばれることもある「都市銀行」からの融資です。
都市銀行とは、全国的に展開しており、知名度の高い銀行であるため、最初に対象として思い浮かべやすい金融機関でしょう。
例えば、三菱UFJ銀行や、三井住友銀行、みずほ銀行など、馴染みのある経営者が多いでしょう。
一般的に銀行の規模が大きくなればなるほど営業規模の対象となる会社の規模も大きくなります。
都市銀行の融資対象となるのは、上場企業などの大企業や、売上10億円以上で資金調達規模の大きい企業となります。
また、融資金額もそのような企業を対象にしているので比較的、大きな融資額が対象となっています。
金利は他の銀行と比較すると低めですが、審査基準も厳しく、小規模な企業や個人事業主が相談しても相手にされない可能性も高くなり、事業開始後に最初に相談する金融機関としては適していません。
ある程度事業規模が大きくなるまでは、利用しにくい銀行融資と言えるでしょう。
小規模事業者の資金調達方法
地方銀行
続いて紹介するのが地方銀行です。
銀行名に「県名」や、「地域名」が付いているなど全国的には知名度が高く無いけども、特定の地域に支店がたくさんあるという銀行がありますよね。
地方銀行は、都市銀行よりも地域密着型の経営を行っており、規模の小さな中小企業に対しても積極的に融資を行っています。
年商2~3億円クラスになれば、地方銀行が有力な融資元となってきます。
メガバンクと信用金庫のちょうど中間のような存在で、中小企業への密着度、一件当たりの融資金額、金利などバランスのとれた金融機関です。
地方銀行同士のシェア争いなどもあるので、有利な条件で融資を引き出すためにある程度規模が大きい会社だと複数の地方銀行と取引があるという状態が普通です。
信用金庫・信用組合
信用金庫は年商1億円に満たない零細企業でも積極的に融資を行ってくれる金融機関です。
民間の銀行、金融機関の中では、事業を始めたばかりの創業者や、小規模事業者にとって最初に融資を申込のに最適な金融機関と言えるでしょう。
起業したての事業者は、まず信用金庫に口座を開くことが多くなります。
また、メガバンクや地方銀行と比較しても、経営が苦しいときでも長期的な視点で融資を行ってくれると言われています。
ただし、一件当たりの融資額は小さく、金利は一般的に高くなりがちで、融資対象となる信用金庫法によって、その地方の従業員300名以下、資本金9億円以下の会社に限定されているので、ある程度事業規模が大きくなってくると信用金庫の融資だけでは物足りなくなってきてしまいます。
政府系金融機関
「政府系金融機関」とは日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府出資の金融機関のことを指します。
政府系金融機関は企業のセーフティーネットという側面もあり創業間もない企業や、災害などの外部要因による不振からの立て直しのために資金が必要な企業にも融資を行っており、一般的な民間銀行では積極的に融資を行わない企業も融資対象にすることがあります。
特に、政府系金融機関が力を発揮するのは創業資金の調達です。
一般的な民間金融機関の場合、事業開始後で、「決算書」、「試算表」などの実績がないと資金調達を申込しても、審査に通過することは難しくなります。
対して、日本政策金融公庫などの政府系金融機関は、創業前の「事業計画書」を持って審査してもらうことが可能です。そのため、これから創業する方も利用することができるのが大きな特徴となります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?
融資の種類
続いて融資をいくつかの種類にわけて、それぞれどのような融資なのかについて説明します。
プロパー融資
銀行と相談されたことのある経営者の中には、プロパー融資という言葉を聞かれたことのある方もいると思います。
プロパー融資というのは、銀行から融資を受ける際に、事業者の銀行からの信用力を測る尺度にもなる融資となります。
「プロパー融資」とは銀行が自身の責任において直接行う融資のことです。
対になる概念として、信用保証協会が融資の保証を行う信用保証協会付融資(「保証付き融資」と呼ぶこともあります)があります。保証協会の保証が付いていないものがプロパー融資です。
保証協会の保証を付けずに、担保や保証人を伴う融資のこともプロパー融資と呼びます。
プロパー融資では信用保証協会付融資やビジネスローンよりも低い金利で資金調達できる可能性があります。
ただし、その分銀行側のリスクも高くなるので、事業規模が大きかったり、経営が安定していたり、取引実績が充分ある企業しかプロパー融資を受けることができません。
中小企業が銀行からプロパー融資を獲得する方法
保証協会付融資
保証協会付融資とは各県に存在する「信用保証協会」という公的機関が金融機関から融資を受ける際に借入に対して保証してくれる融資です。
保証協会は、中小企業が資金調達を行いやすくするための政府出資の機関です。
銀行は信用保証協会の保証があることで、貸し倒れリスクが大幅に低下します。
そのため、リスクの低い融資が可能となるため、一般的に信用が低いと考えられる小規模事業に対しても融資を行いやすくなります。
一方、信用保証協会付融資を利用すれば、銀行がプロパーでは融資を行わないような企業も資金調達ができるようになりますが、信用保証協会に「保証料」を支払う必要があります。
銀行に支払う利息に加えて、保証料の支払いが必要になりますので、資金調達コストが割高になってしまう可能性があります。
また、プロパー融資に比較して、銀行の審査だけでなく、保証協会の審査も通過する必要があるので融資までには時間がかかってしまうというデメリットもあります。
創業後間もない方や、事業規模が小さい場合など、信用力が低いうちは保証協会付融資を活用して、ゆくゆくはプロパー融資で資金調達をするというのが一般的な流れになります。
保証協会付融資を活用する方法
ビジネスローン
ビジネスローンと言えば、ノンバンクの消費者金融などが行っている事業者向けローンを思い浮かべる方が多いですが、銀行もビジネスローンを取り扱っています。
ビジネスローンの特徴は、スコアリングシステムという手法で機械的に融資可能額を算定し、比較的高めの金利設定によって、通常のプロパー融資で貸し付け対象とならなかった企業にも融資を行える点です。
つまり、プロパー融資や、保証協会付よりも更に幅広い企業や個人事業主が資金調達しやすい融資となっています。
しかし、リーマンショック以降、銀行はビジネスローンに対して消極的で、ノンバンクが主要な担い手となっています。
現在、ビジネスローンと言えば、貸金業者と呼ばれるノンバンクが主として融資を行っています。銀行融資に比べ、金利は高めですが、最短即日も可能なスピード融資を、比較的緩めの審査基準で提供しています。
ビジネスローンのメリット・デメリット
担保付融資
何らかの担保を提供して受ける融資のことを担保融資と言います。プロパー融資の中でも別として取り上げました。
担保と言えば、土地や建物などの不動産を提供する不動産担保融資を思い浮かべがちですが、手形や売掛債権などの有価証券も担保になりうります。
担保がある分、事業規模や、利益など、信用力に劣る事業者でも資金調達できる可能性が高まります。
また、担保となる資産の評価次第では、資金調達時の金利が低くなるなど、有利な条件で資金調達できることもあります。
不動産担保付きのビジネスローン
その他
この他にも地方自治体の制度融資や、政府系金融機関の特定の企業を対象にした融資制度などさまざまな融資が存在します。
制度融資とは、銀行から融資を受ける際に、事業を行っている地域の市区町村が保証してくれたり、利子補給を行ってくれるものなどがあります。
但し、制度融資は地域によっても異なりますので、市区町村や、金融機関に確認する必要があります。
貸付方法による種類
銀行から融資を受ける場合、銀行が融資する方法・契約によっても違いがあります。その代表的なものをご紹介しておきます。
証書貸付
代表的な銀行融資は証書貸付です。
証書貸付とは、約定や。借入条件(金利・金額・借入期間など)、返済方法等が記載された「金銭消費貸借契約書」を締結して借入する方法です。
返済条件の詳細を定めて借入が可能であり、詳細な条件を定められるため、中長期の借入に適しています。
そのため、設備投資や、不動産の購入など、長期の借入に利用されることが多くなります。
手形貸付
「手形」とは、商取引で利用する商業手形を使用して借入する方法です。
手形自体には、金額、手形期日などは記載されますが、それ以外の約定や金利に関する記載はなく、手形自体の法律にもとづいて返済を行うことになります。
通常、手形の額面は、借入金額+利息を付加した金額になります。
手形貸付では、「約定弁済」、「分割弁済」を定めることができませんので、通常、1年以内の短期的な借入を、期日一括返済で行う場合に活用されます。
当座貸越
当座貸越とは、借入可能限度額と、期日を定めて、その期間内において、自由に借入・返済を行うことができる借入方法です。
契約だけしておけば、必要な時に都度の審査を要することなく利用可能であり、柔軟な借入が可能です。
また、不要な時に借入しておく必要が無いので、余計な金利を負担する必要がありません。
当座貸越には、担保を要するものや、契約自体に手数料が必要となるものもあるため、利用する金融機関で詳細を確認する必要があります。
自社に適した銀行融資を選ぶ
以上のように融資を行う金融機関毎の違いや、契約、融資制度には様々なバリエーションがありますが、どのように自社に適した銀行融資を選べばよいのでしょうか。
まず、創業したての会社は、政府系金融機関、信用金庫との取引がメインとなります。
政府系金融機関の創業融資や、地方自治体の制度融資を使って資金を調達します。
そして、信用金庫から融資を受けて徐々に返済実績を積んでいき信用保証協会付融資から徐々にプロパー融資を目指します。
売上2~3億円規模になると、今度は信用金庫だけではなく地方銀行との取引も発生します。
この段階に到達すると、どの金融機関から資金を調達するか選べる立場にもなります。銀行とうまく交渉して、ときには担保融資なども利用しながら最も条件の良い融資を引き出してください。
売上10億円以上になると、メガバンクなどと取引することも可能です。しかし、メガバンクの融資対象はやはり大企業や上場企業がメインとなるので、小回りが利く地方銀行との取引は継続するべきです。
よっぽどの事業規模にならない限りメガバンクなどの都市銀行を主として資金調達を行うことはないでしょう。
また、銀行融資では調達できない場合は、銀行、ノンバンク含めてビジネスローンによって適宜資金調達を行います。
審査に通らない時は?
銀行融資で資金調達を行うためには、必ず「審査」に通る必要があります。審査に通らなければ、資金調達を行うことはできません。
しかし、事業開始後間もない方や、収支が黒字化していない事業者、個人事業主の場合など、審査に通過することが難しいということもあります。
こんな時に備えて、経営者や、個人事業主が知っておきたい資金調達方法に「ファクタリング」があります。
ファクタリングというのは、「借入ではない資金調達方法」です。
ファクタリングは、商取引で発生した売掛金を、ファクタリング会社に売却することによって、本来の売掛金の回収期日前に資金化することができます。
借入ではなく、売掛金の売却であるため、銀行融資に比べれば、審査が甘く、資金調達しやすいのが特徴です。
さらに、最短であれば即日も可能といったファクタリング会社も存在します。資金調達に悩まれている方や、銀行融資への依存度を低下させたいという経営者は、ファクタリングも検討されてみるのが良いでしょう。
まとめ
以上のように銀行融資の種類について解説してきました。
経営者にとって資金調達は優先順位の高い仕事であり、経営者の悩みの種となるのも資金調達です。事業が好調であっても、資金調達を誤ると「倒産」することもあります。
資金調達の手法を知ることによって事業の安定性は高まります。
確かに銀行融資が一番資金調達方法ですが、資金調達の相手先を銀行に絞る必要はありません。
ノンバンクのビジネスローン、ファクタリング、クラウドファンディング、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの投資など、銀行融資以外にも資金調達の方法はさまざまです。重要なのは適したタイミングに適した資金調達を実践することです。
本記事で紹介した銀行融資に関しても、提供元と融資制度で分けるとかなりのバリエーションがありますので、企業の状態に適した提供元から、適した融資制度によって資金調達を行うように心がけてください。